2024.3.05早急な未来像構築が必要だ

 ジェットフォイルの老朽化に伴う航路維持の問題は、市のみならず全市民共通の懸念事項と言える。不定期に起きる機関トラブルや思わぬ故障など、これまでに幾度か運航できずに欠航となる事態もあった。ジェットフォイルの更新は深刻な問題だ。大切な乗客を乗せる船の老朽化が進む中も運航を続け、将来的に乗客の安全安心は担保できるのか。その責任はあるのか。最悪、乗客の生命にも関わる可能性もある。

 昨年12月、九州郵船の高速船「ヴィーナス2」が芦辺町左京鼻の沖合で機関故障のため停止、約2時間漂流したトラブルは、老朽化による影響の最たるものではないだろうか。当時の状況は、1階の客室には海水が足元まで流れ込み2階に避難した乗客など、客室内は一時騒然となったという。

 このことから当紙は先月9日発行号「波の響」の欄で「市や県だけではなく国も含めた将来像を定めねば、未来につながる離島航路の維持は厳しいのではないか」と警鐘を鳴らした。「国内で運行している18隻のうち17隻が老朽化による更新期を迎えているという。全航路事業者の共通問題が船の更新をどうするかだ」と問題提起した。

 しかし、「最大の問題は、新船の建造費の高騰であり、航路継続に立ちはだかる死活問題になっている。全国紙報道によれば、2020年に建造された新船1隻を除く17隻の平均船齢は約35年。ヴィーナス1・2もこれに含まれる。現在、運行しているジェットフォイルの建造費は25億円ほどだった。2020年に25年ぶりに同船を新造した東海汽船(東京都)は、約50億円に倍増したという。現在は円安や資材高騰のため、約70億円になるとの試算も。当初建造の約3倍だ」と記した。もはや、一事業者だけでどうこうできる額ではない。

 市は、これまでも県に対してジェットフォイルの老朽化に伴う更新の要望を続けている。昨年10月11日、白川博一市長と市は大石賢吾知事に、10項目の要望が記載された今年度の県への要望書を手渡した。その中に「離島航路における海上高速交通体系の維持」として、ジェットフォイルの更新に関する要望を示している。

 要望書には「離島航路は、人・物の流通手段として市民生活及び産業経済活動に欠くことのできない重要な役割がある。特に、1977年、離島航路で初めて就航した高速船ジェットフォイルは、時速80㌔を超えるスピードで安定した航海ができることから、航海時間の短縮や航海数の増加が可能となり、荒天においても高い就航率を維持できるなど、速く、安全で、快適な乗り心地が利用者に支持される。医療機関への迅速な患者搬送や本士から医師の派遣で市民の安全安心な医療体制の確保、観光面を含めて離島航路に必要不可欠な存在となっている」と離島の実情を述べている。

 2隻のジェットフォイルはいずれも30年を経過、老朽化の進みを懸念して「改正離島振興法に基づき、高速度で安定的に航行することができる新船の建造に対する国の財政的支援について、国への要望等継続を要望する」と大石知事へ伝えた。

 先月2日、当紙は大石知事が視察来島した際に質問した。「ジェットフォイルの老朽化は県内各離島の課題。ただ現実的に建造費の高騰があり、事業者を含め市単独では難しい問題解決だ。県としての考えはあるか」と問うた。大石知事は「県全体の課題。民間として持続可能を見出すことは行政として県だけでは難しい。関係者との協議を重ね解決策を見つけていくこと。市単独ではなく他離島と連携で建造コストを下げるなどの方法を見出せるよう努力したい」と答えた。

 市航路対策協議会は先月22日、九州郵船に対してジェットフォイル更新に関する質問をすることを決めた。5日までに同社へ回答を求めるという。これら一連の流れから、将来の離島航路にとって最善の改善策が示されることに期待したい。