2020.9.08新型コロナで差別意識が起きぬよう

 先月25日、本市で7例目となる新型コロナウイルスの感染確認があった。詳細は触れないが、報道への発表によれば、市内の病院で非常勤として勤務している男性医師が感染した。男性医師は約20年にわたり、同院で診察と治療を行なってきた。お世話になった市民も多いのではなかろうかと思う。

 現在、全国各地で連日のように感染確認の報道がある。いつ、どこで感染するかわからない、明日は我が身が実情だ。感染防止を徹底していても万全ではない。こう言えば誤解を招くかもしれないが、運が左右することもあろう。それほど未知のウイルスに対して、人類は打つ手をこまねいているのだ。

 男性医師に接した診察や治療に訪れた患者は不安がよぎるだろうが、同院に確認したところ、医師は常に医療用マスクを着用し感染防止を徹底していたと言う。防止策は、患者の前だけでなく医師同士、職員同士でも徹底している。この対策が功を奏したのか、接触者と思われる職員21人は全員陰性が確認された。心配される院内クラスターは回避されていると考えていいだろう。同様に、男性医師の診察を受けた患者83人も逐次検査が進められていくが、1日現在のところさらなる感染者はいない。

 4月5日以来の市内感染者確認で、今回も当紙には市民から様々な憶測や問い合わせがあった。その中で、根拠のない憶測から新たな感染者が出ているだとか、他にも院内に感染者がいるなど、うわさレベルの話を信じている人もいた。この先にある不安は、感染拡大だけではなく根拠ないうわさから生じる差別意識ではなかろうか。

 陽性となる可能性は誰にでもある。陽性者は意図的に陽性となったわけではなく、日常の生活で防止策を講じていても感染から免れなかっただけだ。男性医師の行動履歴の詳細は現在、公表されてはいないが、感染の危険がある場所に意図的に出入りしていたとは思えない。

 白川博一市長は今回の感染確認について、一言付け加えている。「感染者及びご家族のプライバシーには格段のご配慮をお願いしたい」とコメントし、感染による差別が起きないように注意を呼びかけている。また、男性医師が務めている病院側もお詫びの言葉を述べた上で、医療現場の立場から適切かつ最良の措置をしていくことを述べている。

 4月に市内で確認されたコロナ感染を経て思うことは、感染拡大と同じように感染者に対しての周りの対応や視線が人を傷つけていくということだ。当時は今より未知のウイルスだっただけに、恐怖心が優っていたのかもしれないが、現在は医療の対応やある程度のウイルス研究が進み、陽性者数に対して重篤者数や死亡率も下がっているのが現状だ。

 GoToトラベルキャンペーンでの来島やお盆の帰省など人の流れがあったことから、この先も再び市内で感染者が確認されるかもしれない。その時は、根拠ないうわさに惑わされず、客観的で冷静に状況を判断し、できる限りの感染防止の継続と、新たな施策があればそれを駆使しながら乗り越えていくべきだ。付け加えるならば、感染防止策とともに、経済支援の充実も必要だ。(大野英治)