2018.7.17廃墟と化す前に早急な対策を

 またしても交通ビルの一部崩壊が起きた。現在の建物の状態からすれば決して安全とは言えず、強風や豪雨が直撃すれば崩壊は予想される事態だ。

 交通ビルの対応については平成28年市議会6月会議で赤木貴尚議員が「廃墟と化し存在することは周辺住民は不安であり、観光客に対して悪いイメージ。早急な対策が必要」「倒壊とか外壁の落下等が心配される」「所有者に対して耐震工事を行うよう促すなど、話し合いはしているか」の質問をしている。
 対して白川博一市長は「危険家屋と認識している。勧告書を所有者に送付してはいるが、責任は個人にあり、行政側が自由に手を加えることができない。耐震工事等については所有者の判断」と答えた。市では現地の見回りや所有者との面談、交渉を継続しながら空き家対策特別措置法に則った手続を行うようにしている。また「定期的に外観の観察を行い、危険な状態を発見した場合、所有者に速やかに連絡をとる体制を整えている」と答えている。所有者と平成27年7月に市役所で面談し、「解体する考えがある」と所有者は述べているというが、未だ手付かずだ。

 空き家対策特別措置法は平成27年5月から施行された法律で、近年増えつつある空き家による悪影響を懸念することから制定された。交通ビルに限らず、全国各地でも古い看板の落下や外壁が剥がれ落ちて通行人がケガを負った事例は多々ある。また国立社会保障・人口問題研究所の推計で、世帯数は2019年にピークを迎え、その後は徐々に減ると見込まれている。世帯が減っても同時に家が解体されるとは限らず、空き家として残るケースもあるという。
 このような社会情勢から、空き家には悪影響があり、さらに増えることを考慮すると、国策として対策を進める必要性があるとして、特別措置法を制定し、市町村の空き家対策に法的根拠を与えた。しかし具体的に市町村が行う施策までは定めておらず、基本方針を示したに過ぎず対策力の弱さがある。もちろん空き家も所有者の財産であり、勝手に撤去することは財産権の侵害になることから、強制撤去はできない。しかし一方でこの措置法は、段階的な手順で著しく保安上の危険となる恐れがあったり、著しく衛生上有害となる恐れがある空き家については強制的に対処できる。

 交通ビルのように、商店街が隣接し人が往来する環境は、そうのんびりとはできない。昨今の異常気象からすると、台風の強風だけではなく豪雨や地震による崩壊も起きかねない。この1年以内だけでも強風による一部崩壊は2度起きている。そのどちらも通行人などへの被害はなかった。しかし今後、被害者が出ないとは言い切れない。本腰を入れて所有者との交渉や対策を講じてほしい。ケガ人が起きてから慌てる事態だけは避けたい。(大野英治)