2023.3.21市民や報道に責任があるというのか

 市議会3月会議初日の7日、白川博一市長の報告により、社会福祉法人北串会(雲仙市、中路秀彦理事長)が、郷ノ浦町で建設計画が進められていた認定こども園の事業を撤退するとの意思が発せられた。白川市長は「6日に電話で連絡を受けた。理由については正式な文書を求めている」として報告を終えた。

 市議会一般質問の10日、開会冒頭に白川市長は同会から文書で届いた撤退理由を読み上げた。理由には「一部の市民や報道機関による偏った度重なる被害、誹謗中傷を受けた。このような状況では、事業運営が困難と判断し、撤退以外のすべはない」として、一部の市民や報道が撤退の理由であるとした。

 北串会がいう「報道」とは、間違いなく当紙に対してのものであろう。前号で同会からの抗議文と反論を掲載したが、その内容から見ても間違いない。そして、「一部の市民」とは誰のことなのか。一つに建設予定地の見直しの声を上げていた市民団体であることは容易に想像できる。他に一部の市民は誰なのか。

 市民団体は昨年、建設地見直しのための署名活動を展開し、同年11月末までに約3千筆の「建設地に反対」の署名を集めた。本市の人口が約2万5千人とすれば、1割以上の市民の声が集まったことになる。しかも、署名活動のための事務所も設けず、善意で集まった市民が足で集めた署名のみの数だ。北串会は、これを一部の市民の声と受け止めたわけだ。

 これでは建設計画の当初から、話が噛み合うはずはない。そもそも当紙の報道を始め、市民団体、署名した市民らは北串会に対して「誹謗中傷」をしたのか。前号でも記したが、誹謗中傷とは「人や企業の社会的評価を低下させるような『根拠のない悪口やデマ』を言いふらしたり、それらを投稿することで家族や所属先を含む相手を傷つけたり、人格攻撃する行為である」とされる。

 ここで重要なのは「根拠があるか、ないか」だ。昨年6月から同建設問題に関して、根拠ない記事を掲載したつもりはない。市民団体も、建設地周辺の環境を良しとせず、別の建設地案を提示し、繰り返し北串会による説明会開催を求めた。同会からの近隣住民へ理解を求める動きは2月以降からで、それまでは直接的な対話もなかった。だからこそ、報道も一部の市民も、解決と理解のための説明会を求めた。しかし、実現しないまま撤退に至った。

 前号の当紙に対しての抗議文や撤退理由など、壱岐市民や島内報道(当紙)が悪いような言い分だが、北串会側はどうなのか。市民の声に応える行動はしたのか。むろん、同会の一方的な解釈ではなく、市民側の納得いく行動という意味で言っている。

 今回の撤退には疑問が残る。北串会は1日に島内を回り近隣住民へ建設の意向と理解を求める訪問をしている。翌3日には、市民団体代表へ「15日から建設に入る」と宣言した。しかし、工事着工を宣言した日からわずか2日半後の6日午前、突如、事業の撤退を市に伝えた。わずか数日前までは建設に意欲を見せた中、なぜ撤退となったのか。この間、一部の市民による反対行動はない。何が起きたのか。

 撤退を決めた謎の2日半の間、約60ページに及ぶ同園建設に関する内部文書が市議などへ届けられた。差出人は不明だ。文書には入札や工事の進捗、予算の繰り越しなどの問題点が示されていた。おそらく、同様の文書は北串会にも届いたのではないか。もしかすると、この文書の中に何らかの不都合な内容があった可能性が考えられる。

 報道や一部の市民からの「誹謗中傷」を理由にするには、あまりにも時系列に矛盾がある。本当の理由は別の部分にあるのではないかという疑いを持つ。例えば事業者選定の公募方法や入札、申請書類の記載疑義など。一部の市民の誹謗中傷による撤退は表面的であり、裏がありそうだ。表面化していない部分を表に出し、きちんとした精査をせねば、再び同様のことが起こる可能性が残る。この問題はまだ終わったわけではない。