2021.3.02全力で財政危機を回避せよ
市議会2月会議の17日、白川博一市長の口から驚くべき言葉が語られた。「来年度の予算編成において、大幅な財源不足を招くことになった」。さらに、財務管理の削減から、「市民生活にも少なからず影響する経費の削減、大きな痛みを伴う項目についての行政改革を断行せねばならない状況」にあるとして、市民への理解を求めた。財政調整基金や減債基金の取り崩しで補填せざるを得ない状況だという。
各基金は、家庭でいえば生活を支える「貯金」と同じ。貯金が尽きれば生活は維持できず、借金をせねば回らない。借金は必ず返済せねばならず、払えなければ破産だ。簡単に言うと、現在の市の財政に同様のことが起きているというわけだ。
なぜこのような事態に陥ってしまったのか。ここに至るまでに、なぜ、市民に向けて事前の公表や説明はなかったのか。市政の取材をしている記者も初耳だった。いや、むしろ昨年の市長選で白川陣営は「健全財政を維持している」と公表していたではないか。一方で対立候補の森俊介陣営は「市の財政は赤字で、予断を許さない状況」として、身を切る経費削減を公約に掲げた。この両陣営による相反する主張は、市民にとってどちらに一票を投じるかの重要な基準のひとつだったはずだ。市長選時と現在で、市の財政状況にそれほどまでの変化が生じてしまったのか。いや、それはない。
市は毎年12月頃に、市の5年先までの財政状況などの見通しを示す「市中期財政計画」を公表している。そこで、ひとつの目安として、3年前から今年度まで、同計画の中にある、財政調整基金など補填による財源不足額の状況と見通しを振り返ってみたい。
同計画によれば、2017年度分の公表では、同年度の財源に不足はないが、翌年度には1億1800万円不足となり、2024年度には2億3400万円不足の見通しを示した。2020年度の財政調整基金残高の予想は、12億6千万円、減債基金残高は20億2千万円としていた。
2018年度分の公表では、2024年度の財源不足額は前年とほぼ同額の2億3千万円を予想。2020年度の財政調整基金残高の予想は、12億1千万円、減債基金残高は14億1千万円と依然厳しい見通しを示した。
2019年度分の公表では、2024年度予想は未記載のため、2023年度の予想になるが、財源不足額は3億7400万円と増加傾向。2020年度の財政調整基金残高の予想は10億円、減債基金残高は6億7千万円と大きく減少した。
そして今年度公表分を見てみる。2024年度分では6億2300万円の財源不足予想が立てられている。今年度の財政調整基金残高は9億5900万円で、前年度から1億5千万円減、減債基金残高は7億6600万円となり、3年連続で取り崩しをしているとの説明がある。今年度公表分の予想で、2024年度分の財政調整基金残高はわずか6千万円。昨年度まで約10億あった残高が、6年後には1割以下にまで減少するという驚くべき予測だ。
市の財政は我々市民の生活やサービスに直結する。このまま基金を取り崩し続けた先は、貯金もなく借金で首が回らない事態に陥る可能性がある。抜本的な改革と共に事態の原因と検証をせねば、とても安心した市民生活など出来はしない。