2021.3.02従来通りの住民サービスは困難

財政不足の危機、白川市長が市議会2月会議で財政状況述べる

 

 市議会2月会議の17日、白川博一市長は冒頭の開会あいさつで「来年度の予算編成において大幅な財源不足を招くことになった」と、市の財政が危機的状況にあることを述べた。加えて、財政調整基金や減債基金の取り崩しで財源の補填をしてきたことも明らかにした。白川市長は「今後も従来通りの住民サービスを維持していくことは非常に困難」と説明したことから、来年度から経費の節減や事業の見直しなどをせざるを得ない状況となるようだ。これまでに白川市長は「財政は健全」と述べてきただけに、今回の発言の詳細な説明が待たれる。

 

 白川市長は、来月予定の市議会3月会議で示される令和3年度当初予算の編成方針について、市の財政が大幅に不足していることを説明し、「徹底した財務管理経理の削減をもとに、市民生活にも少なからず影響する経費の節減、受益者負担の適正など大きな痛みを伴う項目についても行政改革を断行していかざるを得ない状況になっている」と述べた。

 市議会2月会議の冒頭で、3月会議に示されるはずの当初予算の方針について述べるのは異例の対応となる。白川市長は、「市民には厳しい状況を理解願いたい」とし、「3月会議で詳細を説明する」と、今会議では理解を求める旨の話で留めた。白川市長自らが公の場で、財政の危機的状況が含まれた発言をしたのは今回が初めてだ。

 

中期財政計画ですでに分かっていた財政状況

 市は毎年年末頃に5年先までの見通しと財政状況を示す「市中期財政計画」を公表している。昨年1月17日発行の当紙の1面では、財政調整基金の残高などから同計画について「財源不足が深刻」と警鐘を鳴らした。財政不安は以前から分かっていたことになる。

 さらに先月22日発行の当紙には、公表された今年度から令和6年度まで5年間の市中期財政計画を掲載した。その中で現在、約10億円ある財政調整基金残高が、5年後の令和6年度には6千万円にまで減る見通しがわかった。残高は年々減少している。本市の場合、適正な財政とするには、基金残高は12~24億円が必要なため、残高水準の確保には事業の大幅な見直しと予算の適正な振り分けなどがないと改善は厳しいとされている。

 しかし、同計画書には「本市の実質公債費比率や将来負担比率などの財政健全化指標はおおむね健全に推移している」とある。市の事業や施策計画などの検証と見直し、財政状況や将来的な予算編成など財政運営の指針として策定される計画の内容は適切だったのか。

今回、市長が言った「大幅な財源不足」の発言と矛盾が生じることになり、同計画書にある記載との整合性が問われそうだ。

 

市長選時には「健全財政を維持」をアピール

 昨年4月の市長選は、現在と同じくコロナ禍の最中に実施された。

 森俊介陣営は「市の財政は赤字で、予断を許さない状況」と危機感を示したことに対し、白川陣営は「健全財政を維持している」と後援会配布の書面で説明していた。市長選からわずか10か月後の現在、市の財政は健全ではなかったことが露呈した。

 白川博一後援会が同年3月に発行した「白友会だより」には、「壱岐市は健全財政を維持しています」と掲載している。

 内容は、平成30年度の決算状況を示し「歳入が267億19百万円、歳出が258億21百万円で、8億98百万円の残額となります。起債(借入金)残高は、270億19百万円で、うち交付税措置(国が返済金を補助してくれる額)が204億79百万円(全体の75・8㌫)となり、実質起債残高(実質的な市の返済金額)は65億40百万円です。基金(家計では貯金にあたります)は、平成19年度に40億39百万円でしたが、平成30年度で89億97百万円と、49億58百万円の増額となっています」と説明していた。

 一方で、同市長選に出馬した森俊介氏は公約の中で、「市の財政は赤字で、予断を許さない状況」として「身を切る削減」を掲げた。また、「市が行う各事業にいくら使っているのか分からない」として、市民への情報公開をすることで健全な市政運営を訴え、同時に市の全事業の見直しから、年間最低1億5千万円の無駄遣いの削減を目指す「財政健全化条例」の制定を目指ざしていた。

 市議会2月会議で財政の状況を口にした白川市長は、市長選時は健全財政だったと認識していたのか。もしくは、当時から把握していたことをこの時期に公表したのか疑問が残る。詳細な説明がある市議会3月会議で、明らかになることを期待したい。