2019.5.21事件から2年経過、説明責任は
平成29年5月に発覚した、九州郵船本市勤務の従業員による乗客運賃横領事件について、本紙宛に投書が届いた。送り主の記載はなく、消印には唐津市とあるので、おそらく島外者か、もしくは島内在住者が島外から投函したものと思われる。本来なら送り主無記載は紙面で取り扱わないが、投書内容には当紙記事に関する部分があり、掲載責任もあるため紙面で取り扱うことを決めた。
まずは、当時発覚した九州郵船従業員による事件の概要を再掲しておく。『九郵社内で本市に勤務する従業員が数年にわたり、乗客が支払う運賃を横領していた。事件の発覚は、平成28年9月半ばから同社壱岐支店に就任した支店長が、この従業員の挙動や言動を不審に思い問い詰めたところ、自ら事実を認めたことによる。この従業員は犯行が発覚後に退職。また前任の支店長は、これまでこの事実について全く気がつかなかった』。
この事件について、当紙は九郵本社に今年の1月25日号にて、その後の訴訟などの経過を質した。九郵は「一連の事件を弁護士に相談した。その後に刑事告訴に進むこともあり、事実関係の確認を取るという経過があった事で、公表を控えている。詳細については結審となる時期にはなるが、早急に説明をしたい」とコメントしていた。
この質疑を経ての今回の投書になる。投書には「九郵の巨額横領事件について県民として発言する。同社は県から公的資金を受け、船を建造し成り立つ公共性の高い企業だ」とし、「事件から2年が経過するが、問題を放置し事実関係の説明がないのはなぜか」と問う。そして、上記の新聞紙面上の回答を例にあげ、「いずれ、世間が忘れてしまうと思っているのならば、県民を甘くみているとしか思えない。もはや、同社の対処能力の無さに失望感を抱いている」と述べている。
さらに「同社責任者のその場しのぎで、問題を先延ばしにする言い逃れのコメントが県民に不安を与え、横領金の損害の拡大を助長したものと思われる」と厳しく指摘する。また、同社は当時から県議会や市に「早急に説明責任を」と言及されていたが、「説明責任が果たされていない」としている。
投書の最後には「事実が明らかになり、会社の説明責任と、当事件に係る役員の処分を。同社の失墜した信頼を回復し、その上でさらに成長していくことが県民としての願い」とする。内容を読めば、ごく当たり前のことで、大いに納得できるものだ。
事件から早2年以上が経過した。その間、九郵からは新たな説明は何もない。訴訟の段階というが、途中経過などの報告は欲しい。本来であれば、このような形での投書や記事掲載は望ましくない。自発的な説明を早期にすべきと考える。壱岐市民の生活航路と観光振興などを担う九郵の、会社のあり方と自浄姿勢に期待をしたいものだ。(大野英治)