2020.10.27わかりやすく統一した表記に
市民から市に対して、本市の観光振興を進めていく上で最重要事項になる「第3期壱岐市観光振興計画」の中に、事実と異なる記載があると指摘があった。結果的に誤記はなく、県の資料から作成されたものだが、数値の基準がわかりにくい内容だった。日頃から取材を重ねる記者も、市観光課から詳細な説明を受けねば理解するのに時間がかかった。
この振興計画は「実りの島、壱岐」のキャッチコピーのもと、今年度までの3年間の進行計画を盛り込んだ内容で、約60ページにも及ぶ。この中には、人口減少や旅行市場の動向、地域が元気になる源として観光が果たす役割などの計画の趣旨を示し、本市の最上位計画である市総合計画とも連動した、観光振興での最重要計画になる。
市観光課の説明では、同計画は「県の市町民経済計算」の文書から市が作成したものを素案とし、策定委員会へ提出する前に市担当職員が精査している。その後、菊森淳文委員長をはじめ市内経済団体代表など14人で構成する策定委員会が素案を審議していく流れだ。市長への答申までに委員会は3回審議している。
市へ通報した市民は、「十分な精査をしているのか。同計画は地域経済の指針になるべきものだ」という。市の生命線を担う観光振興計画であれば、委員や担当職員が一言一句逃さぬよう隅から隅まで目を通し、特に重要項目の理解は必要であろう。そこまで精査せねば「真に生きた計画案」はできず、机上の空論に終わる。万が一、誤記があった場合は誤った認識になり計画自体も誤った方向に向かう。
本市の経済基盤は、農漁業などの一次産業を筆頭に、加工業や建設業などがあるが、結局のところ約2万7000人規模の人口であれば、島外に向けた経済的アプローチがなければ成り立たないのは言うまでもない。その島外へのアプローチ手段の筆頭と考えていいのが観光業といえる。
同計画で市長への答申をした平成30年3月、本紙では1面に「観光客横ばいの打開策か」との見出しで、観光客増に期待を寄せる記事を書いた。計画の概要について触れ、「観光客実数・宿泊客実数で、平成32年には同28年対比9%増を目標。国内観光客へは滞在型の強化、外国人観光客へは壱岐の魅力が合致する国への情報発信と観光プロモーションを行う。観光まちづくりの強化として、市観光連盟を中心に各産業者や市民の連携、観光振興の重要性の共有」など、観光振興からの本市経済活性化の期待値は高かった。
コロナ禍により、本市では観光業や飲食業への打撃が顕著に現れた。現在はGoToトラベルキャンペーンや各種支援金などでどうにか持ちこたえてはいるが、今後も予断を許さない状況だ。
今回、市民から指摘があった誤記はなかったとしても、無視できるものではない。公文書はわかりにくい表記となる傾向があるが、せめて数字や説明文は理解しやすく、他文書との統一が望ましい。そうせねば、今回のように指摘を受けることが今後も起きる可能性がある。
行政人は、島の経済と市民の生活を預かっているという緊張感を持たねば、良い仕事などできるはずがない。案外、公文書や計画書に市民は目を通しているのだ。「どうせ見ていないだろう」の意識はないだろうか。今回は些細な指摘かもしれないが、近年、市職員の不適正も相次いでいる。市民目線の運営と施策案を今一度考えてもらいたい。その一心であえて書いた。(大野英治)