2023.3.14「市民の知る権利」のための報道だ
1日付で、認定こども園の事業者、北串会から当紙に対して公式な「抗議文」が届き、抗議内容の要点を3面に記した。本来、当紙のスタンスは市内で起きた出来事やイベント関連を掲載すべきところだか、異例のボリュームとなった反論文に対して、読者にお詫びしたい。読者にとっては必要かつ知りたい情報が掲載できなかった今週号だが、現在、本市で起きている社会問題の一つであることから、理解を願いたい。
報道のあり方として、憲法の第21条1項には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」として、「国民(市民)の知る権利」が保障されている。今回の事例で言えば、「北串会は、周辺住民や市民団体らの度重なる願いの住民説明会を行わない。市や県も同様に、周辺環境についての詳細な説明や聞き取り確認、事業者選定の公募や入札説明の不備」など、市民の知る権利が機能していないと強く感じている。
よって、当紙は取材を通して知り得た内容や情報を「市民の知る権利」のもと、昨年の市議会6月会議で同園事業の採決以降、すべて公表してきた。当紙が公表せねば市民は何も知らされぬまま、事業内容の表面だけの情報で建設が進行していた可能性が高い。
一例を言おう。昨年の市議会6月会議で同園建設を賛成多数で可決した。しかし、その前後に建設地が土砂災害の危険区域である事実が判明したが、その段階でも市や議会は公表しなかった。当紙は議会採決以前、いち早く紙面で土砂災害特別警戒区域に隣接することを公表した。結果としてこの報道以降、土砂災害の危険を市民が知ることになった。同じく、周辺道路の交通事故の危険も、「過去5年間で42件の事故発生」を調べ報道した。これにより、市民は数字を根拠とした正確な情報を知った。すべて事実の上で報道した。
市や北串会は建設地のメリットばかりを述べず、本来であれば、負の部分があることも自ら市民に発するべきだった。そのため、周辺住民や市民団体は繰り返し住民説明会開催を要望してきたではないか。なぜ、住民の声に応えようとしないのか不思議でならない。
いったい誰のための同園建設なのか。市や市議会は、いったい誰のために仕事をしているのか。不安を抱える市民がいればその声を聞き、何とか改善を考え、市民主体の行動を取るべきではないのか。事業者も同様に、真摯に住民の声と要望に応えるべきだ。民意を掲載した報道に対し「事実とは違う。抗議する」などの時間があれば、「こういう理由で事実と違う。実際にはこのように考えている」と説明会を開催し、発するべきではないのか。そこで住民も納得すれば物事はスムーズに進むとは思わないのか。
昨年、「国際ジャーナリスト団体『国境なき記者団』が2022年第20回世界報道自由度ランキングを発表した。日本は2021年の67位、2020年の66位から71位に後退。報道の自由度は引き続き悪化している」とある。理由には、権力者へのマスコミの監視の役割が低下しているからだという。
国は役割が低下しているかもしれないが、せめて本市は権力行使や威圧的行為がまかり通るような島にはしたくない。「市民の知る権利」が覆い隠されることなく発信し続けたい。目指すのは、市民の知る権利を遂行する報道だ。問題に向き合わず、土俵の外からヤジを飛ばすだけの報道にはなりたくはない。