2022.3.15「市政に混乱」とは何のことか

 入札指名外しの訴訟判決の確定を受け白川博一市長は、市政に混乱を招いたとして任期満了までの2年間、給与の1割減額を提案した。

 2月会議で白川市長は「自治体の市長として市政に混乱を招いた道義的責任を明確にする」と発言。3月会議でも同様の考えを述べ「判決結果を重く受け止めた。自らの責任について熟慮を重ねた」として、道義的責任を示し、議案を上程した。

 しかし、白川市長が言う「市政に混乱を招いた」とは何についてのことなのか、よく分からない。「何がどのようにして、どういう理由で混乱を招いたのか」の説明はない。ただ、言葉少なく混乱を招いたの一言で説明を終えている。

 先月15日、白川市長は2807文字の長文となる「判決確定にあたって」のコメントを発表。その中に「市政に混乱」の説明はあるのか確認した。冒頭から1719文字は、訴訟の経過と判決結果を説明している。その後は「全てを承服できないが、市政の円滑な運営を図るため控訴を行わないことを決断した」とある。

 続いて「刑事的責任・民事的責任・道義的責任・政治的責任」を示し、その一つの道義的責任として、自らの給与減額を議案に示している。文末には「市民皆様には、この度市政に混乱を招き、ご心配、ご不安をおかけしましたことを心からお詫び申し上げます」とするが、やはり「市政に混乱」についての具体的説明はない。

 今回の混乱とは一体何なのか。損害賠償請求の発生なのか、現職市長への判決の衝撃なのか、テレビや新聞など報道による市のイメージダウンなのか。筆者の個人的な考えだが、そのような安易なことではない。市民に与えた混乱は「民主主義の根幹となる選挙の崩壊」ではないのか。

 昨年10月5日、長崎地裁で裁判長は「対立候補を応援し、その直後に指名回避を受けた。(市民は)対立候補を応援したら市長から指名回避措置を受けるのではないかと思う。周りに対する萎縮効果は非常に強い」と指摘している。

 選挙による指名回避の事実。「市政に混乱を招いた」ことの核心はこれだ。市民の立場からすれば、仕事を奪われる措置は、社会的な死を宣告されたことと同じ。市民に与えた混乱の根底にあるのは、選挙で「自ら選ぶ正当な一票を示せない」ことの不安と不信だ。