2024.2.27「もやもや」が残る運営委員会

 昨年9月の1回目の「市いきっこ留学制度運営委員会」では、突如、来年度留学生の受け入れ開始の発表があり、衝撃を受けた会だった。なんら明確な検証や改善案の効果がわからないままの制度継続に、大きな疑問がよぎった。離島留学生の死亡事案後にしては随分と綱渡りの制度継続だと憤りも感じた。2回目の会は個人情報の観点から非公開だった。そして今回は3回目、再び公開での開催となり制度改善の報告があった。

 市教委からの報告書にはほぼすべての改善策は「改善はできた」の表記でまとめられていた。自ら示した改善策を、自らで評価し、なおかつ「できた」とするのはあまりにも評価が甘すぎる気もする。詳しい報告はなかったが、中途で本市を離れた生徒はどうなのか。極端なことを言うが、これも改善策の成功例なのか。そのようなはずはない。問題の解決にはならないはずだ。

 この件について、委員からの指摘があった。市教委は「残念ながら私たちの力が及ばず、そういう形になった場合もある。里親宅の問題の場合は、里親宅を変更する試みなど選択肢がある。話し合いで解決すべきは解決する」という。別の委員は「改善策がすべてできた報告はうれしいこと。しかし、本当に課題や問題はなかったのか」と疑問を呈した。

 中途終了者について、離島留学生コーディネーターから興味深い発言があった。まずは離島留学生募集時の問い合わせや面談時のことだ。「見学に来たが、離島留学契約を受けることなく帰ることが何件か発生した」という。来年度への留学希望の問い合わせは36件。事前見学は里親留学5件、親子留学4件の計9件。「問い合わせ数に対して事前見学の申し込みが非常に少ない。小学生が多く中学生の見学はほとんどなかった。見学に来たが辞退する人、後日辞退を申し出た人は4件もあった」という。結局、留学生最終決定数は里親留学2件、親子留学2件の計4件だった。

 理由として、募集期間が昨年10月1日から11月15日と短かったこと、留学生継続者が多かったこと、制度に関すること、受け入れ体制に関すること、離島留学生の死亡事案などを挙げた。このあたりの原因究明や検証は今後の課題であり、必要となろう。

 さらに興味深い話は続く。報告では「食事にまつわる問題がいくつも発生した。食材、味付けの好き嫌い、変食や食べ残し、そういうちょっとしたことで里親と子どもの関係が崩れていくケースがいくつかあった」。また、「何らかの理由でご飯を食べることができなかった話が、あの里親宅では満足に食べさせてもらえなかったというわさで広まり、留学生がかわいそう、あの里親はひどいというような話に変わっていた」という。子どもの間で広がった間違ったうわさが真実かのように広がり、中傷や侮辱の対象となることがあったようだ。この報告で、食事は里親生活の重要なポイントの一つだとわかった。

 コーディネーターは「真実はどこにあるのかを見極める力をつけていかなければいけない」というが、そうなれば、心理学の領域にまで話は及んでしまう。

 これまでの同委員会を傍聴し思うことは、「よそさまの子どもを預かることは、安易な受け入れ体制と考え方ではとうてい無理。無理を通せばいずれまた想定外の事案が起きかねない」ということ。そのために里親の研修や事前面談、対話や見守りがあるのだろうが、果たして現状の本市は、その体制が万全だと言えるのか。

 第3者である記者の立場から見れば、過去を含めた各問題にふたをし、「万全の体制」と思い込むだけの綱渡り運営をしているようにしか思えないのだが。表向きは方針がまとまっていそうな委員会だが、なぜか「もやもや」が残るのも実感としてある。