2023.11.21飼育環境に問題なし、なぜ死亡が続くのか
イルカパークでの相次ぐイルカの死亡の原因究明と状況などの説明のため、同園指定管理者と市観光課は8日、市長や市議を招いて現地視察を行なった。イルカの死亡は市や同園のみならず、多くの市民の不安と疑問を巻き起こしている状況からも、早急な検証が必要とされていたからだ。
指定管理者の高田佳岳代表は、同園リニューアル後からの経緯やこれまで死亡したイルカの状況、対処の方法、園内の環境などに加え、これまで疑問とされてきた海水と海底土の調査報告を行なった。
特に海水と海底にある汚泥は、イルカの生育に大きな影響があるのではないかとの推測もあり、明確な調査データ公表は興味深いものがあった。結果としては、生物が生きていく上での基準値を大きく上回る数値はなく、問題はないとの結論が示された。しかし、同園のイルカの場合、特にリニューアル後は肝機能の数値に異常が現れた例が多く、水質との関連性は不明のままとなった。
リニューアル以前の同園でも、イルカの死亡例は起きている。当時はビニールなどの誤飲による死亡例が起きていたという。肝機能に異常があったかのデータは残されていない。
同園のイルカの寿命は平成10年以降の開園から約2年半から3年以内だったようだ。リニューアル後の同園のイルカもほぼ同様で、わずかに数か月ほど寿命が伸びている程度だという。指定管理者は過去の死亡例から、園内の湾に流れ込むビニールなどのごみを定期的に除去し、水質の向上に努めてきた。結果として、湾の沿岸には藻などの植物の育成が見られ始めた。リニューアル後は、誤飲による死亡例は皆無となった。これらは、一つの努力の成果だと言える。
しかし、そうであればなぜ、イルカの死亡が相次ぐのか。飼育環境の説明では、トレーニングや観客とのふれあいによるイルカへのストレスなどの影響は万全の注意を払っていた。与える餌は、リニューアル以前と比べ、質や新鮮さなど格段に向上している。米国で行っている飼育方法も導入した。それなのになぜ、死亡が相次ぐのか。
一説には、イルカの寿命は40年とも60年とも言われる。無論、この寿命年数はより自然に近い環境であり、飼育されたイルカには該当しないのかもしれないが。それにしても園内に来て2年半から3年とはあまりにも短すぎる。やはり原因究明がないままであれば、今後も死亡事例は続くのではないか。指定管理者はイルカの寿命を伸ばす努力をしている。水質などにも異常はない。では原因は何なのか。
当紙は、同園指定管理者についてこれまでさまざまな指摘をしてきた。しかし、それは事業運営や経営上の不手際についてなど。イルカの飼育に関しては努力を認めている。
イルカは些細なことで飼育に影響が及ぶ繊細な生き物と聞く。同園は旧勝本町時代の建築時に、現在では考えられない土壌の埋め立てを行なっている。水質データでは見えない問題はないのか。明確な原因が不明なまま市の方針に沿った責任を任され、飼育を続けねばならない指定管理者も、ある意味でイルカ同様、被害を受けている側なのかもしれない。