2023.8.07難易度が高い見送り理由
2019年より市が導入を進めている洋上風力発電の導入可能性エリアの動きに暗雲が立ち込めている。当紙7月21日号でいち早く、「今期、国への手続き見送り」を記事にしたが、この段階では明確な見送りの理由はわからなかった。
先月31日、市洋上風力発電等導入検討協議会で県は「4月25日に壱岐市から情報提供書の提出があった。しかし、県庁内関係者との協議も踏まえた中で、情報提供を見送る判断をした」という。その判断理由は「防衛省の国防レーダーに影響」「利害関係者となる漁業関係者の理解が重要」の2点が主な理由だった。
協議を始めて3年半経つが、なぜ事前にわからなかったのか。市担当課は「国防に関する内容は国家機密であり、直前まで情報がなかった」という。おそらく、洋上風力の施設が島の北部の若宮島にあるレーダーに干渉するのであろう。そうなれば、干渉しないエリアは島の南部寄りになってしまい、今後は新たな抽出エリアを探さねばならない。
漁業者などへの説明と理解についても、3年半も協議を続けていながら得られていなかった状況はかなり厳しいのではないか。島内漁業者はともかく、島外漁業者への理解もこれから進めねばならない。「国防、漁業者の理解」どちらも難易度が高い問題に思える。
そして、市は実証実験機1基を島の周辺海域に導入する考えを示した。市は「実験機は商用化につながる。漁業や自然環境への影響がわかる。市民への理解が深まる」などのメリットをあげる。しかし、実験機導入には多額の予算が必要だ。本市の財政では難しいことから国の支援活用を考えるが、これもまた難易度が高い。
同協議会で白川博一市長は「市は今年4月、県から国への情報提供に必要となる内容をまとめた書類を県に提出した。一方で県は、国への情報提供の期限まで本市の導入可能性エリア等に関する情報提供を行わず、国への情報提供は見送る判断をした。本市としては非常に残念なこと。洋上風力発電導入は国策、国や県の積極的な関与が必要不可欠。今後は国や県との連携を強化してともに取り組んでいく」と想いを述べた。
しかし、白川市長が発した「非常に残念」この言葉に想いの全てが含まれている気がする。来期以降、「国防への影響、漁業者の理解、国を含めた連携、実証実験機導入の予算」をクリアせねば、導入計画は前に進まない。