2022.2.01稀に見る悪質な事案の印象
長崎地裁で入札指名外しの判決を受けた白川博一市長と市は24日、市議会1月会議の本会議と全員協議会で白川市長自らの言葉で謝罪と説明をした。2016(平成28)年4月に端を発する市長選から約6年経ち、ようやく市民に向けた市長の言葉が聞けた。
係争中、白川市長は「全ては司法の場で話す」とし、市民に向けた説明は一切しなかった。この回答に不満を持った町田正一元議員は平成29年市議会3月会議で「市民もほとんど報道についてのみしか知り得ない立場にあり、心配されている方も多い。市民に対して説明する責任はある」と問うた。白川市長は「事件が決着したならば、こういった行動をとりました、こういった事になりましたなどのいきさつについて、市民に詳しく説明をする約束をさせていただく」と答えている。
しかし今回、記者会見での説明は、市長が言う「詳しく説明をする」には至ってはいなかった。入札指名外しにより一つの会社が廃業し、これまで市民に与えた不安と疑問を払拭するには、説明の時間と内容が到底足らない。掲げた約束と説明責任の果たし方には大きな隔たりを感じる。
判決で裁判長は、白川市長ではなく市に対して約300万円の損害金支払いを命じた。さらに弁護士費用などを含めれば、市の支出は約650万円にものぼる。これら市の支出は全て税金になる。市長は公務員として扱われ、国家賠償法では公務員の失態は市が賠償すると定められているため、判決はやむを得ない。白川市長は24日、市から同額の請求を受け、自ら支払うと約束した。
2016(平成28)年5月、市長と壱岐産業の面会で、市長は「指名から外したのは選挙で対立候補を支援し、私の政治生命を絶とうとした。だから信頼を損なった」と、市政運営とは全くかけ離れた、個人的な保身である説明をしている。
今年10月5日、長崎地裁の尋問で白川市長は「眞弓さんから、白川は『人事で芦辺の人を優遇している、芦辺以外は沈没する、石田のクリーンセンターを潰し芦辺に造る、ワンマンで偏っている』など、私の人格を否定する誹謗中傷を受けた」とし、白川市長は「これらは個人批判」とした。しかし、これらは「政策批判」であるのは明白だ。
市政と個人の区別をせず混同することは非常に危険だ。ましてや市のトップによる解釈のあり方や間違いが起きれば、市の事業を受け持つ事業者は簡単にどん底に落ちる。裁判の傍聴や指名外しに至る資料などに目を通した立場から見て、非常に悪質な事案だった印象を持つ。
入札指名外しは市の失態ではなく、すべて市長による行為であり、判決にも「裁量権の逸脱と濫用があった」と言い渡している。賠償金支払いは法で定められていても、社会的な目線から見れば個人の失態を市(税金)が負うなど、受け入れられるはずはない。ましてや財政再生に向け、市民は補助金削減や住民サービス低下など受けている最中ではないか。