2022.2.01市長、賠償金など全額支払うと約束

民事訴訟判決で賠償金や弁護士費用など約650万円の予算計上

 今月2回目の市議会定例会1月会議が24日に開かれた。議案で市は、一般会計補正予算で653万7千円の追加補正を上程した。予算の内訳は、1月18日に長崎地裁で損害賠償請求支払いの判決が言い渡されたもの。2016(平成28)年4月の市長選で、対立候補を応援した(株)壱岐産業を入札指名回避したことから廃業となり、同社代表の眞弓倉夫氏が原告として白川博一市長と市に対し損害賠償請求の訴訟を起こした。判決は市に対して約300万円の賠償支払いを命じ、さらに弁護士費用などを含めると計653万5865円になる。支払いは、いったん市の予算に計上されるが、その後は白川市長が全額を支払うこと、控訴の場合は再度議案を上程することが約束され、議会は賛成多数(賛成12・反対3)で可決した。

 市は今後、原告被告共に控訴することがなく判決が確定した場合の予算計上として▼損害賠償額299万4956円、遅延損害額85万5407円(2月10日時点の概算)、計385万363円▼訴訟費用概算20万円▼弁護士成功報酬106万390円▼今後、控訴の可能性を踏まえた額で、控訴費用142万5112万円。これら全てを合わせ、計653万5865円を補正予算として計上した。

 控訴がない場合、控訴費用は減額となる。

 

控訴の判断は未だ未定、2月1日が期限

 本会議の質疑で、山口欽秀議員と森俊介議員から「控訴はするのか」と問われ、白川市長は「控訴するならば新たな証拠がなければ厳しい。これらを含めて弁護士と協議を重ねている。はっきりとした判断は言えない」として回答を控えた。

 白川市長自身の処分については「判決の全てを終え確定した後、懲戒処分についての議案を改めて上程する」と答えた。

 植村圭司議員は、今回の議案提出のあり方を指摘した。「議案提出は1週間前が鉄則。しかし今回は、本会議前日の夕方に来た。これでは審議ができない」とし、さらに「控訴するかしないかの決定がなく、あいまいな議案だ。議会に判断を委ねているのではないか」と問うた。総務部長は「控訴がない場合、原告へ速やかな賠償金支払いを行う。控訴の場合も期限があり、どちらにも対応できる予算措置が必要だった」と説明した。

 武原由里子議員は「重要な案件にもかかわらず議案提出が遅い。議会と市民軽視だ。本来ならば控訴判断を決定した後に議会招集すべき。議案の再提案を求む」と意見した。

 音嶋正吾議員も「議会は議案の調査権限を持って審議するが、このわずかな時間で何が調査できると言うのか。今回は議決すべきではない、再提案すべき」と強く訴えた。白川市長と総務部長は「費用の計算などで時間を要した。お詫びしたい」と陳謝した。

 控訴は判決が下った日から2週間後の2月1日が期限とされるが、現在(25日)は未定のままだ。

 

市長「私に控訴の権限はない、するなら市になる」

 本会議前の全員協議会で白川市長は「本件裁判の結果、市が損害賠償責務を負うことが確定した場合、市が市長に対し賠償金及び弁護士費用を含めた全額を求償することとし、私が全額を負担し支払う」と約束した。

 白川市長は「残念ながら、全面ではないが大方の敗訴となっている。このことについて、議員皆様に深くお詫び申し上げる」と謝罪した。さらに「この度、市政に混乱を招き、市民に心配と不安をかけたことをお詫び申し上げる。今回の事案を真摯に受け止め、これまで以上に市の振興発展、市政運営に取り組ませていただきたい」と市民に対して陳謝した。

 入札指名回避の判決については「市長が恣意的(主観的で自分勝手なさま)に行ったことと解さざるを得ないこと、裁量権、すなわち行政を進める中で、市長に許される判断の余地、許容範囲の逸脱、濫用があったと言えることから、これらに基づく299万4956円の損害額となるとの判決だった」と判決文を振り返った。

 控訴などの考えについては「裁判の過程において、市および私の主張が認められず、大変残念な結果となった。相手の控訴の可能性など今後の動向を踏まえ、市議会や顧問弁護士と協議をしながら対応を検討する」とした。

 自身の賠償金に関することの補正予算上程では「今後控訴を行う可能性や裁判が確定した場合、賠償金支払いなど速やかな対応を行うことから、現時点で見込める歳出予算を計上し、その財源は私への求償分を充てることにした」と説明した。

 議員から「市は控訴するのか、しないのか」と問われ、白川市長は「私個人は国家賠償法により責任はない解釈となる。判決としては私の賠償金負担はなく『白川博一は勝訴』となる。しかし、根本の原因は私にあり、市はその分の賠償金を立て替える形で予算に示された。私個人は勝訴であり控訴の権限はない。控訴権限は市になる。市が控訴する可能性を含めた意味で、議案にも控訴費用を計上している」と答えた。

 控訴の可能性については「市が控訴するかは、市長として控訴期限の2月1日までに決める。しかし、まだその判断をするまでに至っていない。現段階では決めていない。控訴の場合は議会の議決が必要であり、その場合は改めて議案を提出する」と答えた。