2023.4.18留学制度の停止を提案する
前回号に続くが、いきっこ留学制度に関する総合教育会議で話し合われた内容は疑問しか感じない。改めて各委員や市長、教育長、市教委の発言を書き起こしたが、子どもが一人亡くなった出来事の危機感や重大さ、命の重みが蔑ろにされているのではないかとさえ思えるものだった。そこで、今一度、約1時間の会議内容の発言を検証してみた。
「いきっこ留学」このまま継続
会議冒頭に白川市長が発言した会議の趣旨内容は次の通りだ。「死亡した椎名さんは、いきっこ留学制度により中学校2年の2学期から里親のもとで生活され、令和3年3月に中学校卒業、いきっこ留学制度を終了した。その後、県の留学制度により壱岐高に進学した。
4月からはさらに1人がいきっこ留学制度を終了し、県の離島留学制度で高校に進学する。今後も引き続き県の離島留学制度で高校へ進学を希望する生徒も考えられる。
これまでも県との連携を取っているが、さらに連携を強化することにより、児童生徒の本市の生活が充実したものとなり、切れ目のないサポートにつながることとするため、本会議で改善策を検討し、壱岐での学校生活を望んで来てくれた子どもたちが健やかに成長できる環境づくりを進める必要があると考える」。市長の言葉には、立ち止まることなく留学制度を進めていく考えが示される。
途中辞退の留学生が後を経たない現制度
市教育委員会総務課は、いきっこ留学制度の実績を述べた。主な内容を抜粋すると「留学生受け入れ実績(里親留学、孫戻し留学、親子留学の合計)は、平成30年度は5人、令和元年度20人、令和2年度30人、令和3年度39人、令和4年度42人、延べ136人を受け入れてきた。令和5年度は46人の留学生となる予定。
一方で里親留学生の途中辞退の生徒は、平成30年度0人。令和元年度13人のうち6人、令和2年度15人のうち5人、令和3年度17人のうち4人、令和4年度20人のうち6人。市教委では留学生の学校生活の支援をしているが、途中辞退する留学生がいる状況」と説明した。
年度ごとに留学生数は増加しているが、同様に途中辞退する生徒も後を経たないことがわかった。一つ疑問だが、途中辞退の詳細な検証をせずに、なぜ受け入れ人数を拡大しているのか。この状況こそが、留学生死亡事案につながっていると、多少でも考えないのか。
死亡事案の説明はわずか数分間のみ
久保田教育長は「途中辞退をする生徒もいるため、里親留学の希望者は里親宅や学校などの事前見学を必須としている。事前見学後の申し込みは9割近い。制度の良さを充実させていくためにはいろんな角度で見直し、充実をしなければならないと考えている」。市長と同様に、制度継続が主な考えだった。
離島留学生死亡に関して市教委は「椎名さんの里親宅には、いきっこ留学制度による小中学生の留学生がいたことから、担当者が里親宅を訪問し留学生の様子についての確認や里親の聞き取りを行った。他の里親には、今後の留学生の状況など変化が見られた場合は連絡をするよう改めて依頼をした。留学生が通う学校に対して、サポートを依頼した」。死亡事案の検証はわずかこれだけだ。
本当にこのままでいいのか。会議は制度の充実と継続を目指すことが着地点だった。前回号の繰り返しになるが、きちんとした受け入れ体制ができるまで一旦制度を停止するべきではないのか。留学生は今年度受け入れまでとし、来年度以降は新規受け入れを止めるべきだ。何の検証も改善案も示せず、誰も責任が取れないのであれば当然の措置だと思うが。