2021.10.19権力の行使は萎縮を生む
平成28年4月の市長選で、対立候補を応援した建設業者社長への入札指名外しの措置は、刑事訴訟から民事を経た。白川市長と壱岐産業の眞弓代表との約6年に及ぶ争いは、ようやく終止符が打たれようとしている。
長崎地裁で5日、白川市長側2人の証人尋問や、白川市長と眞弓代表への主尋問、反対尋問などを経て、民事裁判での結審を終えた。今回号の3面から4面にわたり、白川市長への約40分間の尋問を記事にした。法廷内では撮影機材は当然として、録音機材の持ち込みも禁止されているため、尋問内容は速記に近い形で書き留めた。掲載した尋問は、ほぼ法廷内で交わされたやり取りと違いはない。
法廷最後に裁判長が白川市長へ発した言葉が非常に重たいものだった。裁判長は「公共事業をやる人からしたら、対立候補を応援し、その直後に指名回避を受けた」。選挙直後に入札指名外しをした行為を指摘しているのだ。さらに、この措置を知った市民や建設業者は「対立候補を応援したら、自分も市長から指名回避措置を受けるのではないか」と、市民感情を代弁するように述べた。そして「影響は考えなかったのか」と厳しく問うた。
裁判長の質問に、白川市長は「そのことが原因ではない」と言葉少なめに答えている。しかし、裁判長は「原因ではないとしても、それを言葉に出すことが一番問題」として、市長職の言葉の重みを告げた後、「(市長の言葉は)周りに対する萎縮効果が非常に強い」と、弁護士らによる尋問のすべてを聞いて総括的な言葉を述べた。
法廷内での裁判長や弁護士の尋問から思う。市長を含む三役や幹部職員の言動や行動は、当人が意識せずとも、大きな威圧効果を生むのではないか。裁判長が言うように権力を持つ側から言われれば、受けた側は萎縮してしまう。知らず知らずのうちか、意図しているのかは分からないが、言う側の権力の行使につながる。本市では、この権力の行使が当たり前のように行われている。
現在、問題とされている教育長によるパワーハラスメント(職場内虐待)も近い状況に感じる。教育長直々に発する言葉は、時として周りに対する萎縮効果を生む。
今回の民事裁判は、入札指名外し問題の枠を越え、本市の抱える問題につながるものであった。本質を変えねば、同様の問題はこれからも続いていくことになる。裁判長の言葉を重く受け止め、反省せねばこの先も権力の行使を繰り返すだけだ。