2021.10.19長崎地裁で入札指名外しの民事裁判結審、判決は来年1月18日

 平成28年4月の市長選で、白川博一市長の対立候補として出馬した武原由里子候補(現市議)の応援をした(株)壱岐産業の眞弓倉夫代表に対し、入札指名回避の措置をした白川市長への民事裁判が5日、長崎地方裁判所で行われた。白川市長側弁護士による主尋問で白川市長は「信頼を損なった」以外に、新たに「誹謗中傷を受けた」「同社の経営に不安があった」などの理由も指名回避につながったと述べた。平成31年2月に始まった民事訴訟は、白川市長と眞弓代表のすべての尋問を終え、5日に結審を迎えた。判決は来年1月18日に長崎地裁で言い渡される。

 

 被告原告側の両弁護士による尋問や証人尋問などが交わされたこの日の裁判は、約3時間半に及んだ。

 この日、白川市長はこれまで刑事訴訟などで述べてきた「信頼を損なった」を理由にした指名回避に、新たに「誹謗中傷を受けた」「同社の経営に不安があった」の2つの理由を付け加えた。新たな回避理由の2点は、先に争われた刑事訴訟では触れられていない。刑事訴訟は平成30年6月、地検が「起訴に至るまでの証拠が不十分」とし不起訴とした。これを経て平成31年2月、眞弓氏は民事訴訟に踏み切った。

 白川市長側からは2人の証人が出廷した。石田町の証人は「平成28年3月、市長選前に眞弓代表と武原候補が久喜の総会に顔を出した。その時、眞弓社長は白川市長について、『芦辺町中心の施策をしている。このままでは芦辺町以外は沈没する』など、誹謗中傷を発言していた」などを述べた。

 市内建設会社から出廷した証人は、「平成28年3月にあった県下一周駅伝の反省会の折に、『壱岐産業が事業の譲渡をしたがっているようだ、従業員の受け入れ先を探している』など耳にした言葉を、会で同席した白川市長に伝えた」など述べた。このことを根拠に白川市長は、壱岐産業の経営不安を感じるようになったとした。

 眞弓代表への尋問は、廃業以前の壱岐産業の経営状況に集中した。「経営状況の把握はしていたのか」について、眞弓代表は「経理関係は任せていたので正確な把握はしていない」と答えた。「以前から経営が悪化していたのではないか」の問いには「そう思ってはいない」とした。

 原の辻遺跡周辺の同社所有の建物土地の補償金で、市から8千万円を受けたことについての言及もあった。「補償金により『これで借金が減る』など発言があったのではないか」の問いに、「事業関連の支払いなどに使った。この事と廃業とは関連はない」など述べた。

 白川市長に対しての尋問は、指名回避の理由に集中した。白川市長はこれまで「眞弓社長への信頼を損なった」を理由としたが、今回の尋問で新たに「私個人が誹謗中傷を受けた」「同社に経営不安を感じた」の2点を付け加えた。

 しかし、誹謗中傷は人伝であるため、反対尋問では「噂話を理由に指名回避をしたのか」と厳しい指摘を受けた。経営不安の理由も、同社に対しての調査やデータの持ち合わせがなく「これも噂話のレベル」として弁護士の追及を受けた。

 両弁護士からの尋問を終え、総括として裁判長は白川市長に対し「世間では対立候補を応援したら市長から指名回避措置を受けるのではないかと考える。周りに対する影響は考えないのか。建設業界への萎縮効果は非常に高い」と伝え、白川市長は「思いが浅かった」とだけ発言した。