2020.7.14感染第1波の教訓を忘れるな

 新型コロナウイルス感染症の見通しが全くもってわからなくなってきた。東京都では連日100人を越える陽性者が確認され、この状況は緊急事態宣言が出された4月25日以来70日ぶりだという。しかも、現在の状況は東京アラートを解除し休業要請などの規制を緩和した6月11日以降に起きている。5日の都知事選で再選を果たした小池百合子知事は「近隣の県でも陽性者が増えている。不要不急の他県への移動は遠慮してほしい」と都民に呼びかけた。

 この感染拡大は全国に広がりを見せ始めた。東京都近郊では埼玉や神奈川などでも陽性者が確認され、関西では大阪や奈良などでも確認されている。九州では福岡や鹿児島が同様の状況だ。本県では3日、長崎市に住む20代の男子大学生が感染していたことがわかり、4月17日以来で県内18例目となった。

 先に挙げた東京都の例では、夜の繁華街などでのクラスターによる若者の感染者増が目立つ。感染者の割合で2月から5月にかけての感染第1波よりも若者の感染の比率が高いことも報道されている。専門家からは感染の第2波が始まったという声もあるが、東京都では確かに3月と4月に起きていた事態と近い状況があることから、警戒感を強めなければならないかもしれない。

 各地が感染第1波に襲われた2月から4月までの間、本市では3月14日に初の感染者を確認。島民ではなく関西方面から移住する目的で来島した30代の男性だった。その後、4月上旬に続けざまに確認された5人も、第1波の最中だった。1例目を除き、はっきりとした感染源の特定はされていないが、島外から持ち込まれた可能性は否定できない。むしろ、それ以外考えられない感染経路だった。

 現在、全国的に広がりつつある感染拡大は、東京都の例のように若者に増えつつある。若者らは陽性となっても自覚症状がない場合が多く、また、先月までの外出や移動自粛の反動から、自主的な感染防止の行動に至ることは少ないと思われる。

 今さら説明するまでもないが本市の場合、高齢者が特に多い地域だ。新型コロナは若者は無症状の場合が多いが、高齢者や持病がある人の場合は生命の危機に陥る恐れがあることがわかっている。

 現在、外出や行動自粛は発令されていない。再度発令されようものなら、観光業をはじめとした島の経済がどうなるのか、想像もつかないほどの甚大な被害が起きるかもしれない。現在の状況では、自主的な感染防止に努めるしか手がない。

 現在、本市には関東方面など島外からの出張者が訪れ始めている。一例だが、市では3日、「壱岐なみらい研究所」の開講式を行い、大学の研究員や大手企業社員を招き入れている。本市が進める事業であり否定はできないが、時期は適切だったのか。緊急事態宣言が解除されたからといって開講式での3密に近い状況や、積極的な業務提携などを進めて大丈夫なのか。

 恐怖をあおる気は毛頭ないが、もう少し現在の感染状況を見ながら、慎重に事を進めたほうがいいのではないか。本市での今までの感染者確認で行政が無関係だったとは思っていない。もしも感染者が出た場合は、経済的な面など再び最も痛い思いをするのは市民だ。この島の経済は数か月も耐えられるものではない。また、高齢者が多く住む島である。経済と命を守ることを真剣に考えねば。第2波はすぐそこに来ている可能性があるのだ。感染第1波と同じ繰り返しは回避せねばならない。(大野英治)