2020.8.04コロナ禍で社会の変化に対応せねば

 全国では連日のように新型コロナウイルス感染者確認の報道が流れ、3月や4月の感染第1波の再来のような危機感に社会が包み込まれようとしている。実際、東京都や大阪府では3桁もの感染者が発生し、本県では五島市や島原市など感染確認がなかった地域での報告にただただ驚くばかりだ。

 GoToキャンペーン開始とともに4連休となった先週、本市も久しぶりの観光客でにぎわいを見せた。しかし、例年の夏休み開始時の週と比べれば、閑散としている印象を受けるのはやむを得ない。連休に入ると同時に拡大の一途を続ける感染者増加が、自主的な行動抑制にもなっていたからだ。NTTドコモによるスマートフォンの位置情報を基にした推計で、本市へ向かう観光客の通過点となる福岡市のJR博多駅の人出は、連休初日の午後は前年同月比で24・5㌫の減少。福岡空港は27・9㌫の減少だった。

 コロナ禍により、これまでの生活を変えねばならず、観光のあり方もこれまで通りにはいかないとの意見がある。外国人観光客の誘致に力を入れるインバウンド政策も、この先どうなるのかわからない。ワクチンや治療薬の完成もいまだ見通しは立たず、感染防止のため、飛行機やバス、船や新幹線といった公共交通機関の利用も敬遠される。コロナ禍以前の状況に戻るのは、時間がかかる、あるいは戻らないともいわれる。

 旅行業で躍進した星野リゾートの星野佳路代表は、国内旅行で最初に回復するのは、同乗者以外とは接触がなく感染リスクが低い、自家用車で片道1~2時間くらいの旅だという。近距離の旅を「マイクロツーリズム」といい、コロナ禍の現在と収束以降は、これが主流になると見ている。

 マイクロツーリズムは、昭和40年代以前からある国内旅行の主流に近い。新幹線や高速道路網が発達していなかった時代、地元の人が地元に近い温泉旅館などを旅先としていたスタイルだ。今で言う県境をまたがない旅行スタイルと同じだ。

 星野代表は、現在は交通網の発達でマイクロツーリズムは減ったが、今回のコロナにより再燃すると予測している。日帰り旅行や地元に近い温泉旅館の利用が注目されるようだ。そのため、積極的に地元の魅力を地域内に発信した方が良いという。

 現在、本市の観光振興のあり方はどうだろうか。本市の場合、地域としては長崎県にはなるが商圏的には福岡市とのつながりが深い。星野代表の分析を基にマイクロツーリズムに照らし合わせて考え、「地元の人が地元に近い観光地」となれば、都市部では福岡市が主となりそうだ。しかし、市は3月末で福岡事務所を閉所し、現在では遠方となる東京都に目を向けている。

 コロナ禍以降の社会の動向や変動に敏感にならねば、こと観光業に関しては大きなズレを生み出しかねない。さらに、これから感染第2波3波も考えられ、東京都や関東方面など遠方からの旅行者の誘致には感染リスクが伴う。Withコロナ時代になり「以前の常識は非常識」を頭に叩き込まねば、この先の見通しは厳しい。(大野英治)