2020.8.14「あまごころ壱場」の今後に島内の動き見えず

 67年間にわたる経営で島内最大の土産店「あまごころ壱場」が6月末に閉店し、その歴史に幕を下ろしてから早1か月余りが経とうとしている。その間、市内経済人とあまごころ本舗株式会社(大野妃富美代表取締役会長)は、数度にわたって今後の方針を検討する機会を設け話し合いを進めてきたが、億単位の譲渡や運転資金の必要、コロナ禍による経済状況の不透明さなどから交渉は暗礁に乗り上げている。同社によれば「このままの状況が続くようであれば、島外資本への事業引き継ぎもやむなし」との考えも出始めているようだ。

 

現状では島外資本と交渉もやむなしか

 郷ノ浦町東触であまごころ壱場を運営していたあまごころ本舗株式会社は、昨今の新型コロナの影響や同社の営業転換などの理由から、5月25日に閉店の意思を決め、6月30日に全ての島内観光事業の営業を辞めた。

 同社は、1953(昭和28)年、郷ノ浦町に壱岐名産店を開業して以来、67年もの歴史を持つ。本市では老舗の店となる同社が閉店を決めた5月末以降、市民や市内事業者には大きな動揺が走った。

 以前、当紙の取材で大野会長は「67年間、島で働いてきたので壱岐への思い入れも強く、あまごころが培ってきた理念を継続してもらえたらうれしい限り」と想いを語った。また、「8月中には準備期間を経て再開に向けた動きが始まればと思っている」とも語っていた。さらに、建物内の設備が放置されたままになれば、引き継ぎ後の運転再開に支障が起きることや、市内各所への土産品卸の事業が止まる事態は他店営業にも影響が及ぶことから、早期の引き継ぎ先を探していた。

 卸業務は、土産品以外にも壱岐のキャラクター品やグッズなども含まれ、市内各所の販売店に卸していたが、現在は途絶えたままだ。また、元社員も「市内の店からは、土産品の卸しを再開してほしいと要望がくる。せめて、卸業務だけでも新会社を立ち上げるなどの方法で再開できないものか」と苦慮していることから、卸業務を再開するため、早期の別会社立ち上げに向け全力を注いでいる。

 建物などの施設の見通しについては7月を過ぎ、市や市内事業者から今後の方針の打診がなかったことから、同社は問い合わせが来ている島外資本数社への事業引き継ぎに応じていく考えも視野に入れ始めた。「同社が培ってきた営業理念や壱岐への想いの一致がなければ、引き継ぐことはない」としている。島外資本との交渉について門戸を開く考えがあることを示唆する現状から見ても、先月末から大きく方向転換する局面を迎えているようだ。

 しかし、これまでの営業形態がそのまま継続されていくのかは不明だ。

 

市内経済人との話し合いはまとまらず

 閉店が決まった後、当紙には「閉店後はどうなるのか。店舗継続などの話はあるのか」などの問い合わせが殺到した。その多くが「修学旅行や団体客の受け入れに支障が起きる。このままでは他の観光地に客が奪われるのではないか」や、「大型バスなどが乗り入れできる土産品店がなくなることは島にとって大きなマイナス」など。

 5月25日に閉店を決めた後、大野会長は6月に市議会議員10人ほどと白川市長と別々の機会を設け今後についての話をしたことを明かした。この時、市長や市議からは「閉店後の見通しなど、市の経済人と話し合いはしたのか」と問われた。以降数回にわたり、市内経済人と集まって話し合いが行われている。話し合いでは、農協や漁協、市や主要事業者らによる分業式の統合施設として活用する案などが挙がった。

 先月15日に市内経済人と大野会長を含めた数人で最終的な話し合いをしたが、意見がまとまらず今後の見通しまでには行きつかなかったようだ。理由は施設再開の資金などが多額になり、各団体や事業者、また市の助成金などを考えた上で、建物を買い取るのか賃貸にするのかなど、さまざまな課題の解決が見えなかったため。

 

観光関係者の声

 市観光連盟は、今後の観光への影響や同規模施設の必要性について「団体客の収容を考えれば必要な施設ではあるが、状況は厳しい。市内には他にも土産品の生産者や販売店もある。今後は独自の特産品開発などで幅を広げていく考えが必要。しかし、時間はかかる。コロナ禍もあり、現状でははっきりとした見通しはついていない」と不安を口にする。市観光課は「団体客などの受け入れは厳しい。しかし、修学旅行では3密を避けた新たな旅行スタイルもできつつある。状況に合わせた受け入れでしばらくは対応する」と述べた。

 今後、同社の判断により島外業者との業務引き継ぎの交渉が活発になるだろう。しかし、同規模施設の必要性は市や市民も同様に考えていることから、可能であれば市や市内事業者による運営で再開できることが望ましいのだが。