2025.12.01有人国境離島法の改正・延長へ

市民600人が参加、国に制度維持と拡充を求め決起大会
2027年3月末に期限を迎える「有人国境離島法」の改正・延長を求め、郷ノ浦町の壱岐の島ホールで22日、総決起大会が開かれた。市民約600人が集まり、法の延長と制度拡充、必要な予算の確保など5項目を国に求める決議を採択した。官民が一体となり、制度継続を求める機運の高まりを示した形だ。
同法は2017年に施行された10年の時限立法で、航路運賃の低廉化や輸送コスト支援、創業支援、雇用拡充などを柱に、国境離島の生活と産業を支えてきた。本市も恩恵を受けており、制度の行方は地域の生活基盤そのものに直結する。
大会は市国境離島新法民間会議と市国境離島新法協議会(両会とも川﨑裕司会長)が主催、市、市議会が共催。大石賢吾知事、山本啓介参議院議員、古賀友一郎参議院議員、山田勝彦衆議院議員、鵜瀬和博県議会議員らが出席した。
議員らが相次ぎ登壇それぞれの視点で危機感
冒頭、川﨑会長は「運賃低廉や輸送コスト支援、雇用拡充など、多くの恩恵を受けてきた。だが、市民の間には当たり前との認識が広がっている。制度が実現するまで多くの尽力があったことを忘れてはならない」と強調し、改正・延長へ向けた理解の広がりを求めた。
山本参議は「制定から8年。まずは延長を確実にし、その上で制度を時代に合わせて拡充していく必要がある。離島の未来を拓く制度へと進化させたい」と述べ、政策の継続性と柔軟な見直しの必要性を指摘した。
古賀参議は「離島航路運賃の低廉化は、次世代に必ず引き継がなければならない重要施策だ。物価高騰や人口減少などの課題に直面している今こそ、国が離島をしっかり支えるべきだ」と語り、支援維持の必要性を訴えた。
山田衆議は、制度の政治的成り立ちにもふれ「同法は与野党の垣根を越えた超党派で成立した。延長も同様に超党派で進める。航路低廉化の対象拡大や国負担割合の引き上げも視野にある」と述べ、制度強化に前向きな姿勢を示した。
地元の鵜瀬県議は「離島の活性化が見え始めたのは、同法施行と時を同じくする。人口減少や担い手不足が深刻化する今、延長と改正は絶対に成し遂げなければならない」とし、島の現状と制度維持の必要性を重ねて強調した。
大石知事は「県民にとって同法は不可欠。制度の活用で雇用創出や社会増につながった実績もある。県として最大限声を上げ、予算拡充を国に求めていく」と述べた。
産業界からも、制度の効果が報告された。市農協和牛部会の井出春敏会長、勝本町漁協の小畑剛参事は「輸送コスト支援で経営が安定し、本土との差を埋めることができた。一次産業だけでなく、市全体の産業基盤を支える制度だ」と述べ、支援の継続を求めた。
採択された決議では、壱岐の地理的・歴史的役割を踏まえ「本市は国境離島として国家の安全保障に直結する」と明記。人口減少や高齢化、産業の担い手不足などの現状を示したうえで、法改正と延長、輸送コスト支援の強化、貨物航路補助制度の創設など5項目を国に強く求めた。
地域の生活と産業の維持に直結する制度の行方を巡り、市民の機運は確実に高まっている。一堂に会した今回の大会は、国に対し制度継続を働きかける重要な節目となった。
大会後には、大石知事と市民約30人の意見交換会も行われ、航路運賃低廉化の対象拡大、農水産業支援、高齢者施策などの提案が寄せられた。知事は「声を県政に反映したい」と応じた。
