2025.10.27敷設から15年経過する情報通信網の不
大雨・リス被害・台風で断線相次ぎ、公設光ケーブルの維持費膨らむ
本市の暮らしを支える情報通信インフラが、多方面から揺さぶられている。市内を走る公設光ファイバー網は、整備から約15年が経過して老朽化が心配される一方、タイワンリスによるかじり断線や台風被害に加え、近年は異常気象による損傷も相次いでいる。8月の大雨では、市内20か所で断線・垂れ下がりが発生し、三島地区では海底ケーブル立ち上がり線の修繕も必要となり、市は市議会10月会議でこの対応費として補正予算約184万円を計上した。度重なる光ファイバー網のトラブル。自然環境の変化と進む老朽化への対応が身近に迫る。
市では、2011年に国や県の補助で光ファイバー網を全域に敷設し、市民生活の向上に努めてきた。医療・教育・行政サービスのデジタル化を支え、島内の通信格差を解消する役割を果たしてきた。コロナ禍ではオンライン授業やリモートワークの基盤としても機能し、まさに島の命綱として定着している。2017年には、より大容量かつ高速通信を見据え、通信設備の増強も行われている。
しかし近年、設備の老朽化に加えて外的要因による被害が目立つ。タイワンリスがケーブルをかじる被害は市内各所で確認され、修繕費がかさむ。台風や大雨では、強風や倒木、土砂流入によってケーブルが切断・損傷し、通信やケーブルテレビ放送が一時的に途絶することもある。壱岐のような離島では代替ルートが限られ、復旧までに時間を要するケースも少なくない。
こうした状況を踏まえ、市は通信事業者や施工業者と連携して保守体制の強化を進めているが、設備更新や修繕には多額の費用がかかる。国は今後、公設光網の民間移行を進める方針を掲げるが、採算性の低い離島では事業者の参入意欲は乏しい。市地域振興計画でも「国の公設光ケーブルや関連施設の民間移行を含めた事業継続計画の策定」が喫緊の課題とされている。
「通信が止まれば決済も仕入れもできない。電気や水道と同じ基盤だ」と市内事業主は語る。防災無線や行政情報、医療通信なども光回線に依存しており、断線は生活に直結する。市民からは「修繕費が増えても仕方ない」「むしろ安心して使える体制を整えてほしい」との声も上がる一方、「税金負担の拡大をどう抑えるのか」との懸念も聞かれる。
政府が掲げる「デジタル田園都市構想」では、全国どこでも高速通信を確保することを目標にしているが、現場では将来的に老朽化、気象災害、採算性の壁という現実が立ちはだかる。光ケーブルの一本が切れれば、行政・経済・生活のすべてが停滞する。
この状況に、市の一緒に推進課は「本市に敷設したケーブルは約15年経つがほぼ劣化はない。断線などはリスがかじったり自然災害などの外的要因による断線がほとんど。ケーブルの更新は今のところ予定はない」と話す。一方で、一般的にケーブルの耐用年数が20年ほどと言われ、近い将来に更新が生じる可能性は高い。その場合、多額の予算が想定され、安易に楽観視できる状況というわけでもない。
市は国や県と連携し、補修・更新費の確保と防災面の強化を進める方針のようだ。財源の確保は補助金のみならず、自主財源も重要となる。細い光ファイバーの線の向こうには、離島の安全と未来がつながっている。
