2024.8.06市民、保護者の声届かず(へき地保育所閉所問題)

志原・柳田保育所閉所、市子ども・子育て会議と市担当課は「方針変えず」を主張

 

 市子ども・子育て会議(植村英生委員長)は先月23日、芦辺町の那賀地区公民館会議室で40回目の会合を開いた。市子ども計画の策定や市内幼稚園の統合方針などについて協議し、へき地保育所の方針に関しての意見聴取をした。へき地保育所閉所について植村委員長は「同会議は市の諮問を受け、協議した上で答申する場だ。よって再協議は行わない」との考えを述べ、市いきいろ子ども未来課は「今月中に柳田保育所保護者を対象とした閉所説明会を開く。引き続き、閉所の手続きを進めていく」とし、閉所の見直しはしない意向を示した。

 

 市が今年度末で閉所の方針を固めた郷ノ浦町へき地保育所について、同会議が市へ閉所の意向を示した答申を提出したとの経緯から、へき地保育所の存続を望む会(穎川加奈江・田中愛妃共同代表。以下、望む会)は植村委員長へ要望書を提出し、傍聴席に着座した。

 要望は、「子ども子育て会議で早急に、へき地保育所のあり方についての検証を求める」とし、要望事項は①へき地保育所閉所の判断に至った過程で、保育の量だけでなく、保護者の生活環境の変化や保育の質の変化に関する議論がなされたか②メリット、デメリットの両想定が提案されたか③へき地保育所2園の閉園に伴う人流の変化を想定した議論があったか-の3項目を示した。その上で、「3項目の要望をテーマにした議論が慎重に審議され、保護者が納得する結論に至っているのか、確認を願いたい」という内容だった。

 

へき地保育所閉所の再協議は「しない」と判断

 会合の前日、望む会の共同代表らは植村委員長宛に「へき地保育所(志原・柳田保育所)に関する要望書」を提出、同会議で意見を述べる機会を求めた。植村委員長は「望む会の気持ちはわかる。ただ、同会議は市、市教育委員会、市長から諮問を受け、その諮問に対して必要な調査や審議などを行い、市長に答申をする場になる」と同会議設置の意義を説明した。

 へき地保育所の方針については「同会議が示した答申に基づいた方針で市が進めている。さらに答申は市議会にも報告したと聞く。よって改めてこの同会議で検証する必要はないと考えている。へき地保育所閉所の検証であれば、同会議の議事録があるので、確認願いたい」とし、委員長は、望む会の要望の検証と協議は必要ないとの判断を下し、委員に意見を求めた。

 委員からは「保護者の立場で意見を言う。該当する保育所の保護者が現在、どう思っているのかは重要。周りの保護者の声では、閉所に賛成と反対に分かれている。同会議での協議は終えているという委員長の意見もわかるが、それでは保護者の声は届かないままになる」とし、意見聴取の場は必要とした。

 他の委員は「今回の議事にある『幼稚園統合方針』とへき地保育所閉所は双方が関わってくる問題だと思う。よって、意見を聞く場は必要ではないか」と述べた。

 委員の意見を受け、植村委員長は「あくまでも望む会の意見を聞くと言うことであり、協議はしない。同会議の主体は委員の意見交換の場だと言うことを理解せねばならない」とし、望む会の意見を聞くことのみを承諾した。

 

望む会が意見を述べるも方針変わらず

 望む会は「閉所に関する問題は、令和4年度から不審に思っていた。平成26年度に公表したへき地保育所のあり方を示す答申と、答申から約10年後の現在とでは状況が変わっている。しかし市は、当時の方針をそのまま変えずに進めようとしている。保護者の声も聞かず、このまま進められることへの危機感を感じた」との考えを伝えた。

 5月末の時点で約500筆の署名を篠原一生市長に示し、方針の変更を求めたことについても「市長は昨年夏に最新の答申があり、その方針に沿っていると述べた。その答申は市民や保護者などに公表されなかった。市担当者は、同会議や議会で決めたことと言うが、その後に調べた限りでは、やはり市民や保護者には開示されていない事項が多々あった」と、市と市長の対応に不満の声を上げた。

 望む会は同会議に対し「市担当課や市長に申し出ても、取り扱ってもらえない。同会議で協議を申し出ても、もう終わったことだと判断されたことに、大きなショックを受けた」と率直な考えを伝えた。「同会議は、有識者や子育て支援当事者など、さまざまな代表が、子ども支援の政策参加、管理することができる仕組みのはず。ならば、子育ての当事者の気持ちも考えて協議をしなければ、今後、協議を進めていく予定の幼稚園統合方針にも同様の問題が起きることになるのでは」と意見した。

 市担当課は「今後、へき地保育所閉所の手続きを進めていく」と考えを変えず、今月中に柳田保育所保護者を対象とした閉所説明会を開くことを報告した。具体的な認定こども園計画がない状況を鑑み、「子どもたちに何ができるかを第一に考え、集団生活での学びや活動の提供、施設の集約化による保育士の効率的な配置により、質の高い保育の提供へつなげたい」と述べた。現在、休園中の志原保育所については「地域への説明、閉園に向けた協議を行う」とした。