2025.10.13国の採択を受け、生活圏形成へ挑戦

「2050年人口2万人」目標と現実の隔たり、市民に見えにくい成果

 

 市議会10月会議が8日にあり、市は、第4次総合計画で「2050年に人口2万人」の目標に向けた政策の議案を上程した。国土交通省の「地域生活圏形成リーディング事業」に令和7年度2次公募で採択され、持続可能な生活モデルの構築に向けた調査研究を始める。AIを使った将来人口のシミュレーションや、生活サービスを20分以内に利用できる「20分都市」構想の検討、民間資金の活用調査などに取り組み、官民協働の新しいまちづくりを目指す。事業費は1450万円、このうち約3分の2を国が補助する。

 

 市議会10月会議で市は、第4次総合計画に掲げた「2050年に人口2万人を維持する」という目標に基づく、地域生活圏形成リーディング事業の案を示した。事業内容は▽官民連携プラットフォームの設置・運営▽未来予測EBPM推進のための分析業務▽20分都市インフラ等に関する調査研究▽SIB等ファイナンス手法の調査研究▽地域生活圏形成に向けた方針の策定――の5事業。

 国交省の事業にある「地域生活圏」の形成推進で、本市は令和7年度2次公募で採択を受けた。国とともに地域の持続可能性を高めるための先進的なモデル構築を目指す。

 現在、本市の人口は減少傾向にある。総務省統計によると、島の人口は昭和30、40年代に5万人近くまであったピークから大幅に減少し続け、現在は約2万3千人台。児童生徒数も人口に比例し、一貫して減少傾向にある。高校卒業後の進路も厳しく、近年の調査では県外就職率は5割を超え、若者の流出に歯止めがかかっていない。

 一方で、市の人口ビジョンが示す2万人維持という数字は、市民にとって「絵空事」と映ることも少なくない。「目標を掲げるのは簡単だが、具体的に何をするのか見えにくい」「交付金で短期的な雇用をつくっても、将来に続くかどうか不安」といった声が市民の間には根強い。

 今回の事業の柱となるAI分析や官民連携プラットフォームの設置は、先進的な試みだ。市は、証拠に基づく政策立案(EBPM)の導入によって、将来の人口動態や生活圏の変化を科学的に予測し、効果的な施策を検討できると説明する。だが、市民の実感としては「数字やシミュレーションだけで生活が改善するわけではない」という距離感も存在する。

 実際、これまでも移住促進や観光振興、一次産業の付加価値化など、さまざまな施策が展開されてきた。しかし、短期的なイベントや補助金事業にとどまり、暮らしの根幹を支える仕事や教育環境の整備には結び付きにくいのが現状だ。ある市内の事業者は「補助金で雇用が増えても、補助が切れれば続かない。持続性のある産業育成が不可欠」と指摘する。

 人口減少の克服は、単なる数字合わせでは実現できない。子育て世代が安心して暮らせる医療や教育環境を整え、若者が地元に残りたいと思えるような職場を創出することが欠かせない。また、高齢者が住み慣れた地域で生活できる支援体制も必要である。これら一つひとつの取り組みが、結果として「島で暮らし続けられる」実感につながる。

 国交省は、本市の取り組みを全国の先導的事例として位置づける方針だ。ただ、最終的に問われるのは「市民の生活がどう変わるか」である。2050年に人口2万人を維持するという目標は、島の将来像を描くための大きな旗印ではあるが、現実は厳しい。空洞化する地域社会の現状を直視し、数字ではなく生活の質に根ざした政策をどう形にできるか。

 2050年の人口維持という遠大な目標を掲げるだけではなく、足元の課題を一つひとつ解決し、市民が「政策の効果を感じられる」状況をいかに築けるかが、市政の最大の課題と言える。