2025.12.16問われる観光施策と再考すべき運営
イルカパークの将来的な運営と増額の是非を問う
壱岐イルカパーク&リゾートの今後の運営をめぐり、行政だけでなく市民の間からも不安の声が高まっている。市は、昨年実施した生物学者ら専門家による検討会の結果を踏まえ、同施設の継続方針を明らかにした。指定管理費については、獣医確保に伴う経費などを反映し、現行の年間800万円から1200万円への増額案を提示している。イルカパーク運営は赤字が続く。しかし、問題は本市の観光全般に及ぶ。市の観光施策に対する向き合い方の不足感が、観光客数や観光産業の低迷を招いている。将来に向け今、課題に向き合わねば今以上の衰退を招きかねない。
イルカパークの指定管理費をめぐっては、これまでも議論が繰り返されてきた。リニューアル当初は年間約2千万円、その後は「自立運営を目指す」として800万円に縮減した経緯がある。それがここに来て再び増額へ転じた形だ。
赤字経営が続く同施設の運営状況に、定例記者会見の場で篠原一生市長は「次期指定管理者の3年間の状況を見て判断したい。必要があれば見直しも行う。体験プログラムの充実などにより黒字化の可能性はある」と述べ、継続の意思を示した。
一方、市民の中には、増額案への疑問や、相次ぐイルカの死亡、財政活用のバランスの観点から、施設運営が市民生活と乖離しているとの声も少なくない。
市の説明姿勢にも課題が残る。施設経営の責任を指定管理者に押し付ける印象が拭えず、観光政策全体の不振という根本的問題には向き合おうとしていない。管理費の増減が議題に上がるたび、議論はイルカパーク単体に目を向けるが、低迷する観光全般への対策こそ喫緊の課題である。
観光客の増加なしに、イルカパークの来場者増など望めるはずもない。すなわち、イルカパークの赤字構造の主要因は「観光施策の弱さ」にある。本市の観光客数が増えれば、同施設の経営改善も自ずと進むのは当然の理屈だ。
要するに、まずは観光施策全般にメスを入れねば、この先も指定管理者や他の観光事業者にも負担を強いられ、責任を背負わされる。根本的な原因は、観光施策にあるにも関わらず。
イルカパークの指定管理者募集要項には、おおまかな収支が示される。指定管理の収入では、令和5年度の入園料収入は約1090万円、体験料約1100万円、計約2200万円。6年度の入園料収入は約1060万円、体験料約810万円、計約1870万円。5年度の指定管理にかかる費用では、人件費約2200万円、動物医療費約540万円など、計約3800万円(6年度分は掲載なし)。
令和5年度だけで見ても赤字であることがわかる。6年度も指定管理にかかる費用を5年度分を例にして見ても、やはり赤字だ。詳細な資料さえ公開されているのであれば、より明確な収支が見えてくるはずだ。しかし、どう考えても赤字であることに変わりはない。この先、もしもイルカの死があった場合、新たなイルカの購入費が重なれば、さらに費用は増額される。
例えば、学校単位での生徒の誘致などを続けることなどでイルカパーク単体で見れば、一時的には何とか収支のバランスは保たれるのかもしれない。また、指定管理者の副業などで経営を保ったとしても、根本的な課題解決とも言えない。注目すべきは、イルカパーク単体の運営状況にある。
イルカパークへの指定管理費増額は、市民や市議会の賛同を得られるものなのか。現在も市民からは、イルカに頼らない新たな施設運営のあり方を求める声がある。島全体を含めた観光施策の改革を行わねば、指定管理者や観光事業者への責任と負担はこの先も続く。課題として向き合うべき時期に来ている。
