2025.2.18介護・支援の課題話し合う

高齢化社会の今後と問題点改善のための会議開く

 

 市は3日、今年度第1回「市高齢者福祉計画及び介護保険事業計画作成委員会」「市地域包括支援センター運営協議会」「市地域密着型サービス運営委員会」の一括会議を壱岐振興局内の会議室で開いた。壱岐医師会の光武新人氏が会長を務め、市歯科医師会、市内福祉関連施設代表、介護関連施設代表など15人の医療介護の専門職で構成された委員が出席。保険事業や介護の方針などを話し合い、現在の課題と高齢者が増加していく将来に向けた建設的な意見を交わした。

 

 本市の医療や介護をテーマとした会議で、光武会長はこれまでの介護実績などを受け「高齢化社会を迎えるこれからの介護には、医療と介護の関係者が同席し話し合うことが必要。お互いに共通意識を持たなければ、今、何が必要で何をすべきかが噛み合わず、課題に向き合う時間を要する。現代は、両職を分けて進めることに無理がある」とし、同会への医療従事者の参加を促した。

 加えて「本市は県内でも医療設備などの充実度が高く、他の離島ではあり得ないほど恵まれている。しかし、予算などの兼ね合いで医療の衰退を招けば、二度と元のような充実した状況には戻らない。医療の低下は介護への負担につながる」と意見した。

 さらに深刻な状況に、「現在、本市では高齢者の透析患者を引き受けられる施設はない。大きな課題の一つだ」と危機感を募らせた。

 

高齢化社会の本市、介護状況の実態

 市保健環境部保険課は、市の介護保険事業についての報告と、今年度から令和8年度まで3年間にあたる高齢者福祉施策の基本方針となる第9期計画の進捗状況を説明した。

 2025年には「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、高齢者の5人に1人が認知症になると言われる。2040年には「団塊ジュニア世代」が65~74歳の前期高齢者になり、急速な高齢化に加えて労働人口が大幅に減少する。そのため、介護などの社会保障費負担の増加や介護の担い手不足が深刻化することが予想される。

 これまで約20年間の本市は、予想以上の人口減少と少子高齢化で、高齢者人口の増加が進んでいる。以前の同会合では「高齢化は進むが介護職などは足りない。このまま看護、介護職員が足りなければ必要な介護を維持できない。課題に向き合う計画が重要」と意見があり、危機意識を持って取り組みを進めた。

 本市の介護保険料の基準額は一月当たり6490円、県内19保険者では5番目に高い保険料となっている。納付状況では、昨年度の収納額が5億9918万6615円、不納欠損額が1774万2955円となり、収納率は93・23㌫、前年度から0・01㌫下回った。

 介護保険では、65歳以上の第1号被保険者の推移で、昨年度の保険者数は9554人、本市の高齢化率は39・8㌫だった。高齢者数の増加にある本市は、令和元年度37・4㌫、2年度38・1㌫、3年度38・6㌫、4年度39・1㌫であり、わずかながらも高齢化率は上昇していることがわかった。

 要介護支援の認定者数は、高齢化に伴い年々増加している。昨年度の認定者数は、第1号被保険者9554人に対し認定者数は2175人、認定率は22・8㌫。令和元年度22・3㌫、2年度22・3㌫、3年度22・5㌫、4年度22・4㌫。介護予防サービスのうち、平成28年度より訪問介護と通所介護が総合事業に移行したことで、サービス利用の介護認定が不必要となったことなどから、一時は認定者数の減少が見られたが、令和元年度以降はほぼ横ばいに推移している。昨年度の要介護支援認定者数2175人のうち、比較的軽度となる要支援1と2、要介護1の認定者は約半数の48・9㌫だった。

 介護利用者の推移の昨年度実績では、居宅サービス1276人、地域密着型サービス78人、介護老人施設などの施設サービス403人、計1757人。居宅サービス利用者が最も多く、全体の72・6㌫。介護サービス給付費は、昨年度30億6745万3千円だった。

 市の報告を受け、委員からは「介護職従事者の職員数などの推移や、従事者の統計調査も必要。報告では実績を並べているだけ。数字が示す根拠や課題などが示されるべき」など、より良い介護を目指すための意見が交わされた。

 

三島地区の状況改善に何をすべきか

 市地域包括支援センターの事業報告の中で、郷ノ浦町の三島地区に関する意見が交わされた。同地区には介護認定者支援事業として、市福祉協議会が委託を受け持つ介護予防の取り組み「ゆうゆうお達者クラブ」がある。しかし、人口減少の影響などによる深刻な課題がある。

 同クラブは、大島で週1回、原島で月2回実施しているが、今年度実績では昨年12月末時点で、大島は38回開き、延べ141人が参加した。原島は0回0人。原島では令和3年度も0回0人、4年度は23回30人、昨年度は6回9人と継続が厳しい状況だ。

 この状況に委員からは「高齢者の居場所づくりは必要。なんとか活動を続けてもらいたい。活動自体が介護予防につながる」とし、三島地区の改善を強調した。

 

送迎タクシーサービスの充実を

 高齢者サービスの実績では、通院などに利用するリフト付き送迎タクシーの利用者増に伴う問題点が話し合われた。タクシーの移送サービスは市内のタクシー会社が従事し、市内在住のおおむね65歳以上の寝たきりの高齢者で、一般交通機関での移送が困難な人のために用意されている。利用件数で昨年度は市内全域で1909件、令和元年度が1724件だったことから増加傾向にある。

 一方で、市内在住の75歳以上が利用できる、1路線100円の市内路線バス乗車カードは、昨年度実績で対象者5467人に対し、利用率は約20㌫と低い。過去の年度でも同じく20数㌫の利用実績だった。このことから委員からは「交付事業であり予算もかかっているが、もったいない。予算を他の介護に使えないか」などの意見があった。

 送迎タクシー利用者増と路線バス乗車カードの低利用率から、委員は「タクシー会社も高齢化で人手不足であり、送迎に関わる時間の限界もある。解決策として社協などの参入が考えられるが、民業圧迫の声もある。しかし、社会の仕組みは変わりつつある今、市は福祉の専門職員による安全な移送サービスを考え、通院の利便性など利用者に寄り添った体制を考える時期にある」と市に対し意見を伝えた。