2019.6.11ダム貯水や田んぼの水不足を危惧

写真は芦辺町の梅の木ダム(6月3日撮影)

 

5月中の降水量の低さが影響。梅雨入りの回復に期待

 

 島内各所で水不足が起きている。ダムの貯水率は例年に比べ約10から15㌫低く(3日時点)、稲を植える農作業用の水も不足しているため、雨が降るまで作業を躊躇する米農家も多い。中には先月中に耕し、水を張って稲を植える準備までしていた田を、苦渋の決断で休ませたところもあるという。他にも水が干上がりひび割れをしている田も見かけた。今週末から梅雨入りが予測されているが、ダム貯水と田植えに備えられるだけの雨が降るのか、2年前のような豪雨が起きることはないのかなど、今後の天候を注視する必要があるようだ。

 

 島内各所の稲作用の田を管理する米農家では、降水量の少なさから農業用水が足りず、予定していた田植えができないと頭を抱えているようだ。芦辺町のある農家は「田はいくつもあるが、雨が降らずに水が足りないから、手を付けられない」と田に水を張ることを躊躇している。また、JA壱岐市の営農センター職員は「先月から雨が少なく水がないため、田植えの一部を休田などで対応している」と言う。耕した全ての田に稲を植えることは可能だが、水不足により枯れてしまうことを危惧しての対応だ。現在、田植えを行なった田は、全体の約7割ほどで、残りは梅雨入りしてからの降水状況で作業していくようだ。

 水不足による田植え作業の厳しさは、島内各所に及んでいる。現在のところは田植えが済んだ田には水が張ってあり、「ひとまず安堵したものの、今後の降水状況により変動する可能性がある」とJA職員は言う。一部の田を休ませることにより、水不足に対処するしかないようだ。

 

 気象庁の芦辺観測データによれば、今年4月に入っての降水日は10日ほどで、降水量は1か月で計約100㍉を記録している。しかし、5月に入ると雨が降った日はわずか6日しかなく、降水量は1か月で計36㍉と少ない。1981年から2010年までの平均値では、4月の降水量が約145㍉、5月が約174㍉となっていることから、例年以下の降水量になっていることがわかる。また、5月は最高気温25度前後の日が1か月の半分を占め、例年よりも暑い日が続いた。

 さらに、農業用水や生活用水として利用されるダムの貯水率も厳しい状況になっていることがわかった。県が管理するダムの貯水率データ(3日時点)は、永田ダム(郷ノ浦町)が貯水率71・2㌫、勝本ダム(勝本町)80・7㌫、男女岳ダム(芦辺町)16・8㌫となっている。男女岳ダムは例年で25から30㌫の貯水率であるため、通常から低い値だが、16㌫台はかなり不足していることになる。

 勝本ダムで作業をしていた県担当者は「極端に貯水率が低いとも言えないが、このまま雨が降らなければ厳しい状況であることは確か。梅雨入りからの雨に期待したいのだが」と話した。

 

 気象庁発表では、九州北部の梅雨入りは今週末ごろになりそうだ。また、今月の最高気温は30度前後の真夏日が増え、低気圧や前線の影響による大雨が降ることが予想されている。

 思い出されるのが、2年前に起きた「50年に一度の豪雨」を記録した年。6月中旬までは今年と同様のダムの貯水率を示し、その後の豪雨で貯水率を回復した。しかし、その時には各所に甚大な被害を及ぼしている。今年も2年前と同じ傾向になる予報はないが、十分に警戒しなければならない時期に入っている。