2025.5.113年後までの市観光戦略を公表

まずはコロナ禍前の観光客水準に、観光客増に向けた取り組み

 

 市は先月25日、令和9年度までの3年間に向けた市観光戦略を公表した。市は「市総合計画で策定した交流人口拡大をはじめ人口減少化対策などの施策を具体的に実施していくにあたり、観光関係事業者や市観光連盟などと意思統一を図り、観光分野に特化した個別の戦略が必要となるため策定した」と説明している。策定にあたり、素案段階で市民への意見公募を行い、6人から計45件の意見が提出された。

 

3つの基本目標で観光推進を強調

 観光戦略は、令和11年度までの市の方向性などを示す第4次市総合計画が基準にある。特に、総合戦略では「一緒に前へ、壱岐新時代へ。」を合言葉に、「2050年人口2万人」を目標に各分野で施策を進めている。総合戦略をベースに、観光戦略では「観光分野に特化した個別の戦略が必要となる」とし、これまでの「観光振興計画」を継承する形で、シンプルでわかりやすい形式を目指すことで、より効果的な観光推進を目標にしている。

 新たに策定した観光戦略の基本方針は「個人・団体旅行・教育旅行、スポーツ交流など、多様なニーズに応じた旅行商品や滞在プログラムの充実を図る。宿泊施設の充実をはじめとする受入環境の充実と、情報発信やセールス活動を強化」とし、「地域の価値と新しい人の流れが未来をつくる島」を将来の目指す姿として、3つの基本戦略を掲げている。

 1つ目は「高付加価値な観光地域づくり」。主な事業案には、福岡市を訪れている観光客をターゲットとし、潜在的ニーズを掘リ起こすことで、もう一歩足を延ばしてもらうための取り組みを行う。集客力のある「壱岐イルカパーク&リゾート」のさらなる発展のため、施設の飼育管理・生育環境の改善に取リ組む。観光客が冬期に減少するため、観光事業者などと連携し、壱岐の新たな魅力づくリに努めるなど。

 他には、本市特有の歴史・文化遺産の宣伝や、テレビや雑誌などとのメディアタイアップ、教育旅行やスポーツイベントなどの補助金など、多岐にわたる。

 2つ目は「受け入れ環境の充実」。外国人観光客増を目指すインバウンド接遇マナー研修の実施、壱岐ちゃり(電動自転車)、電動バイクなどの周知・普及、観光案内板や観光施設のトイレの洋式化、バリアフリー化などハード面の整備。また、観光客の利便性向上のため、タブレットやスマホを活用した情報発信・案内システム、多言語対応、キャッシュレス対応、ICTを活用したスマート観光の推進など。

 3つ目は「セールスプロモーションの充実」。市ホームページやSNSの活用、各種メディアと連携した情報発信の強化を図り、今年度は日本遺産認定10周年を迎えるため、五島・対馬と連携し日本遺産の情報発信強化に努める。国内外の旅行会社などへの営業活動を行うとともに、旅行博や商談会に参加し、情報発信を行う。アンケートなどの調査に基づく観光マーケティングを推進し、新たな旅のテーマ掘り起し事業を行うなど。

 市は、観光戦略推進のためには、市民や観光関係事業者、観光振興団体が連携して取り組む必要があるとし「市観光連盟を中心に、魅力ある壱岐の観光資源を活用して戦略に掲げた目標の達成に向けた観光振興を目指す」と意気込みを見せている。

 

観光の現状と課題を調査、今後の対応に活用

 市が公表したデータでは、平成30年度の観光客延数が約38万5千人、令和元度が約39万人だったが、コロナ禍となった令和2年度が約23万4千人、令和3年度が約22万6千人と、コロナ禍前の6割弱まで減少した。コロナ禍以降の令和4年度が約32万人、令和5年度が約35万人と、コロナ禍前と比べ約9割弱まで回復しているのが現状だ。

 令和6年度に実施した来島者一人ひとりの行動パターンなどを示した観光マーケティング調査では、2023年6月~昨年5月までの1年間における来島者は計23万41人。夏季が多く、冬季は44㌫減と季節差が大きい。市は、冬季の観光客増が重要とし、「冬に魅力を増す観光資源のプロモーションが求められる」とした。

 旅の目的では、「食」と「自然」が約7割と、本市を訪れる旅の主要な目的・テーマとなっている。30歳代以上の男性は「歴史」、30~50歳代の女性は「リラックス」を志向する割合が比較的高い。

 旅行の同行者は、「家族」が29・1㌫ともっとも高く、「団体旅行」が20・3㌫、「友人」が19・1㌫、「ひとり旅」が18・4㌫。以前は、団体旅行が多かったが、近年では家族や個人旅行が増えていることがわかった。

 旅行先を決める際に参考にするメディアでは、20~30代は「インスタグラム」「You Tube」といったSNSやWEBサイトの利用率が高く、60代以上は「旅行会社」が4割と高く、旅行会社の広告や店頭で情報を入手したうえでの団体旅行での来訪が多い。

 旅のルートは、「猿岩」を軸として「はらほげ地蔵」「辰の島遊覧船」「壱岐イルカパーク&リゾート」「月讀神社」などの主要観光地や、他の観光スポット間の周遊が多い傾向だった。