2022.6.14認定こども園、柳田周辺に計画

郷ノ浦町で来年4月から開設予定、へき地保育所は閉所統合へ

 

 市は先月30日、市議会全員協議会(以下、全協)を開き、来年4月に郷ノ浦町柳田田中触に民間運営の認定こども園を開設する計画があることを表明した。市議会定例会6月会議で施設建設費などを支援するための補正予算を計上した。議案内容では、総事業費2億5848万円を国と県、市がそれぞれ負担することになる。突然の補助金支出に一部議員は「なぜ事前の報告や説明がなかったのか」と詰め寄るが、市は「県が認定した事業のため、本市が補助金を支出することは義務」と説明。「市は口を挟む権限がない」として、事実上の決定事項である旨を報告した。一方、当紙の調べで建設予定地周辺が土砂災害警戒区域に指定されていることが分かり、今後議論を呼びそうだ。

 

 市が上程した議案では、事業目的として「認定こども園の開設により、延長保育・一時預かり・子育て支援・送迎などの保育サービスが可能となり、子育て世代の多様なニーズに対応できる」とする。事業計画をすすめるため、国と県、市は建物建設費などの施設整備の一部を補助することになる。今回の認定こども園は、雲仙市小浜町の社会福祉法人北串会が運営し、民間の事業経営として計画が進む。

 同園の総事業費は2億5848万円にのぼる。補助額は国が2分の1負担の1億1510万6千円、県と市がそれぞれ4分の1負担の5755万2千円。市は、地方債から4600万円、一般財源から1155万2千円を支出するため、補正予算を計上した。

 

全協のみで説明があった事業計画

 市議が動画投稿サイト「ユーチューブ」で全協の模様を配信した内容によると、郷ノ浦町のドラッグストアモリ周辺の国道沿いに建設計画が上がっているという。その後、当紙の調べでは旧辻川石油跡地が計画予定地になっていることが分かった。開設開始予定は来年4月、受け入れ人数は70人を予定し、午後7時まで預かりが可能、送迎は同園が行うようだ。

 事前公表や市議会への説明がないまま開設までに一年を切っている事実に、全協で説明を聞いたある議員は「まさに寝耳に水」と驚愕した。全協の説明で市は「今回、郷ノ浦町に予定される子ども園は、公設ではなく民間施設だった」と理由を述べた。

 全協の内容はマスコミや市民など一般には公開されないことから、断片的な情報や話から探っていき、ようやく詳細が見えてきた。

 全協で議員から「新たなこども園を作る話が急きょ上がったが、事前の予算計上も説明もない。さらに一般公募を行うことなく、勝手に認定するのはどうなのか」などの意見があった。市は「民間事業であり、事業委託はない。公募もない」とだけ説明している。

 市は「本市に民間事業者が認定こども園を作ることに対して、市は許認可する権限はない。権限は県になる」という。しかし、市は同園開設に向け約6000万円の補助金を支出することになるため、納得いかない議員もいたという。

 市議会6月会議に上程された、6月補正予算の議案によると、補助金は国が2分の1、県が4分の1、市が4分の1負担することになる。議員の話では、「県が許認可を出せば、本市は義務負担として支出するしかない。県と国で決めたのであれば、市は許認可に対して良し悪しの口を挟む余地はない。本市は義務として補助金を出さねばならない」と市から説明を受けたという。このことは、6月議会に補正予算として上程されるが、無条件に可決せねばならないことを意味する。

 

初山、志原、渡良、柳田、沼津の保育所は閉園へ

 今回の認定こども園開設の計画は、突然浮上した話だった。1月に雲仙市の事業者が県に申請、2月に県から市へ要綱の確認などの質問が届いたという。市はその時点で初めて認定こども園を作る話が上がっていることを知った。そのわずか2か月後の4月、県から許認可が降りたとの報告があったという。県から市への打診があり、わずか半年で計画が実施される。

 全協では同時に、へき地保育所の運営についても話が上がった。2014年の市子ども・子育て会議で「市公立幼稚園及び保育所の運営のあり方について」の答申を市に提出。市は、答申に基づき、へき地保育所の統合に向かって進めていた。

 今回、郷ノ浦町に認定こども園ができることから、初山、志原、渡良、柳田、沼津の5か所の保育所は2024年3月に閉所する方向となりそうだ。市は、閉所の理由に「保育所が受け入れられる在園率、いわゆる子どもが通っている率が40㌫を切っている。職員の人件費や建物の老朽化などの問題もある。コスト面で考えた場合の判断」と全協の場で説明しているようだ。

 問題は、統廃合後の現職員の雇用など。また、初山や沼津、渡良など新設の子ども園から遠い地域に住む住民の考えも考慮する必要がある。同施設では送迎をするとあるが、現状では住民への説明が足りていない。保護者は「統廃合の理由は分かるが、遠くから通わせなければならなくなり利便性は低下する。送迎もあるというが、実際はどうか。それよりも、なぜこのような突然の話になるのか。事前の説明がなく、また市民は置いてきぼりにされた」と嘆く。別の市民からは「今まで保育所を運営してきた職員などへの説明はあったのか。まずはそこからの話ではないか」など厳しい意見があった。

 

建設予定地は土砂災害特別警戒区域内

芦辺中新校舎建設問題の繰り返しか

 認定こども園の事業内容やへき地保育所の統廃合の話以前に、子ども園の建設予定地には大きな問題をはらんでいることが分かった。同地周辺は、県や市が把握しているはずの土砂災害警戒区域と特別警戒区域に該当する。

 2016年の芦辺中学校の新校舎建設では、当初の建設予定地で計画が進みつつあった芦辺ふれあい広場が、土砂災害特別警戒区域内にあることが発覚した。事実を知った多くの市民は、ふれあい広場への建設を反対。予定地変更を余儀なくされた市が、旧那珂中跡地に変更した経緯が思い起こされる。

 市が公表している市土砂災害ハザードマップでは、郷ノ浦町田中触の国道沿いの一部は土砂災害警戒区域と特別警戒区域に指定されている。子ども園建設予定地は、建物が建つと思われる位置から奥が急斜面となる。同マップで確認したところ、特別警戒区域が周辺にあり危険エリアに該当する。

 2016年の芦辺中新校舎建設の事例から見れば、予定地再検討の必要がありそうだ。