2024.12.03県へ篠原市長就任初の要望活動

県知事へ要望12項目、主要事業の進展を求め実現可能な内容に重点

 

 篠原一生市長と小金丸益明議長、鵜瀬和博県議は22日、県庁で大石賢吾知事と面会し、12項目の要望が記載された今年度の県への要望書を手渡した。篠原市政としては4月の就任から初の要望活動になる。要望の主な項目は前市政を引き継ぐ内容だった。ただ、篠原市長は「まずは実現可能な要望を知事に伝えた。今回の要望は、新たにゼロベースで考えたものもある」と自信を見せた。大石知事も可能な事業や支援に「協力は惜しまない」とし、建設的な意見が交わされた。

 篠原市長は冒頭、大石知事へ「新造が決まったジェットフォイル更新は、県の主導的、積極的な活動がなければ実現できなかった」と感謝を伝えた。市の現況では「来年度策定に向けた第4次市総合計画が進んでいる。今回は、25年先を見据えたより長期的な視点で考える。その実現のために今から5年間、未来への種をまく期間として何をすべきかというような計画にした。壱岐新時代を一緒に前へというスローガンにし、地元に愛着が持てる未来を作る。そのため、ぜひ県には協力と支援をお願いしたい」と大石知事へ伝えた。

 今回、市が提案した要望は壱岐空港の整備やクロマグロ漁獲枠の拡大など全12項目。昨年の10項目から新たに、勝本港の活性化を目指す海業の推進や、インバウンド誘客の2項目が増えた。

 大石知事への要望を終えた同日、引き続き篠原市長と小金丸議長、鵜瀬県議は県議会議長室で徳永達也議長に要望書を手渡した。

 徳永議長は、今回の要望について「離島の状況はよくわかる。しっかりと県と連携し支援を進める」と理解を示した。

 

海業への支援

 

 今年度の要望から新たに加わった「海業への支援」について、篠原市長は「勝本町漁協が、無人島をめぐる遊覧船の運航やカフェなどの営業も行っており、海業の先駆けとして本市の観光振興にも寄与していただいている。勝本港黒瀬地区の埋め立て工事が進むことで、より一層、地域の活性化が起きる」とし、島北部の観光拠点としての考えを示した。

 大石知事は「離島地域の振興を図る上で、事業者の所得向上、雇用をつくるといった観点でも非常に重要なもの。県としても一緒に進めたい」と前向きな考えを見せた。

また、「地域が一体となって取り組むことが重要。県では、地域の特徴を生かした海業を推進するため、海業チャレンジ応援事業の支援がある。ぜひ活用を」と述べた。

 

インバウンドの誘客

 

 近年の社会情勢や経済状況の変化により国内観光客が減少し、本市観光産業は大きな影響を受けていることから、篠原市長は「外国人観光客の誘致を積極的に進めたい。しかし、本市にはインバウンド誘客に関する人材やノウハウが不足している」と現況を伝えた。

 この状況を変えるため「県はインバウンド誘客の実績とノウハウがある。本市の魅力を磨き上げ、海外から注目される観光地にする。インバウンド向けのプロモーション(宣伝)や観光商品の開発や専門知識を有する職員の派遣など、県の協力を」と要望した。

 大石知事は「壱岐市と連携して進めていきたい。体験型の旅行に対する需要も高まっており、旅行需要の変化も踏まえながら、引き続き誘客の支援をする。プロモーションは、情報発信といったことを連携で取り組んでいく。観光商品の開発や専門知識を有する職員の派遣については、需要に的確に対応できるように相互の人材育成と連携強化は非常に重要。市町と県との人事交流を常に実施している。具体的な協議ができれば」と協力を視野に入れた回答を見せた。

 

原子力災害時の広域避難

 本市は郷ノ浦町、芦辺町の一部、石田町が玄海原発からUPZ30㌔圏内にある。万が一原発事故が発生し、移転指示が発令された場合は、UPZ圏内の住民約1万3400人は島の北部に避難することになる。放射線のモニタリングなどの結果で最悪の事態の場合は全島民が島外避難になるなど、原発からUPZ圏内の自治体として全国的にも稀有な立地にある。

 この状況から市は、島外避難先に福岡県の北九州市、直方市、行橋市、中間市、刈田町と、避難場所や受入れ体制などの調整を行ってきたが、現在は福岡県が対応窓口となり、長崎県、本市との3者で協議を進めている現状だ。

 このため篠原市長は「市民の安全・安心の確保を図るため、船舶会社との調整、受入れ港の港湾管理者との調整、スクリーニングを実施する時期や場所など国と関係機関との協議をともに進めてもらいたい」と要望した。

 大石知事は「船舶会社には事故発生時の汚染を理解いただき、避難時の船舶利用について協力を得ることが重要。受け入れ先も同様に汚染の理解、避難待機時の検査は下船後に実施をする必要があることの理解が必要。これらを踏まえて避難地の受け入れ先選択を進めることになる。いずれも国の協力も得ながら協議や調整を行っていく必要がある。福岡県とは、協議に向けて日程調整などを行っている」と述べた。