2023.5.07留学生死亡を受け、制度検証へ
転学や退学した生徒は23㌫、課題が多い「離島留学制度」8月までに見直し
本市で先月、離島留学制度を利用して壱岐高に通っていた男子生徒が行方不明の後に死亡したことなどを受けて、県の離島留学制度の運用と課題を検討する「これからの離島留学検討委員会」が20日、県庁の教育委員会室で第1回会議を開いた。委員は「同制度で離島の高校に通う生徒には、不登校などのさまざまな事情があり、生徒の下宿先となる里親が少ない現状がある」など、支援の拡充と地域の協力の必要を求めた。県教委は、制度を利用する生徒で、転学や退学をする離島留学生は2割に上り、「受け入れ態勢が不十分だった」と説明し、「公立高校と比べて多い状況」と明かした。検討委員会は、本市・対馬市・五島市ぞれぞれに検討部会を設置、アンケート調査などをもとに8月下旬に制度の改善策をまとめる考えだ。
検討委員会のメンバーは、県内大学の有識者や弁護士のほか、同制度対象地域の本市(白川博一市長、久保田良和教育長)、対馬市(比田勝尚喜市長、中島清志教育長)、五島市(野口市太郎市長、村上富憲教育長)、県教育委員会など13人で構成され、県立大の本田道明学長補佐が委員長に就いた。
委員会は、市の離島留学制度を使って市内の里親のもとで生活していた高校2年の男子生徒(17)が先月1日に行方不明となり、同月20日に郷ノ浦町原島の海岸で遺体となって発見したことを受けて開かれた。男子生徒は、市の「いきっこ留学制度」(里親留学)を利用し、中学2年の9月に転入。その後は高校の離島留学生として進学し、里親留学継続中に起きたできごとだった。
全国的にも離島が多い本県では、2003年から島の活性化などを目的に離島の高校に全国から生徒を集めて通学させる「離島留学制度」の導入を始めた。現在、対馬、壱岐、五島、五島南、奈留の5校が対象で、留学生は国際文化やスポーツ、語学など各校が実施しているコースを選び学ぶ。制度開始から21年間で実施高校数は3校から5校に増加し、これまでに計1129人が入学するなど順調な伸びを示していた。現在は5校に179人が在籍し、うち約8割が島外からの留学生になる。
県によると、2018年度から3年間で入学した269人のうち、学校や里親生活への不適応などを理由に転学や退学となったのは23㌫に及ぶ62人。特に中学生の時に50日以上の欠席をしていた生徒は約21㌫の58人を占めた。県は「受け入れ後の相談や支援体制などを検討する」とし、委員からは「里親の選定基準が不明瞭。実態の把握が重要」などの指摘があった。
一方で、里親の不足も課題となった。委員らは「離島留学を希望する生徒は増えているが、里親が集まらない」と苦悩を訴えた。現在、計31戸の里親が85人の子どもを下宿させている。この状況から、本市では一戸で7~8人の留学生の面倒を見る里親もいる。
適正規模について県教委は「各市で検討しており、県教委での取り決めはない」とした。里親のなり手を増やし不安を解消するため「里親への研修は今後検討する方針」とし、本田委員長は「同制度は開始から20年が経ち、見直しのタイミングの時期。今後、里親への支援をどこまでするのか、壱岐市の事案の背景は何だったのかの検証をしていきたい」と話した。