2021.9.07生徒のため正すべき、教育組織

教育長の方針に現場教員が反論【教育現場から疑問の声②】

 市内小中学校の教育現場と市教育委員会、教育長の実態と問題を、市民の声や意見を載せる「目安箱」8月6日号に掲載したところ、当紙宛に多くの意見や情報が寄せられた。投書は、市内小中学校関係者と思われる市民から寄せられたもので、問題発覚のきっかけとなった。投書は「本市の教育方針のひとつにある『問題解決的学習』のあり方がすべての生徒や教科にはそぐわず、低学力の生徒はさらに授業に追いつけず置いてきぼりとなってしまう。その問題点を校長、さらには市教育委員会に訴えても聞き入れてもらえず、挙げ句の果てには教育長から厳しい指摘と圧力が加えられてしまう」という内容だった。これは事実なのか、あるいは教員の思い込みなのか。真実を知るため、なるべく多くの学校現場の声と投書を集めた。

 

真っ向から食い違う教員と市教委の回答

 8月6日掲載の「教育現場から疑問の声」は、市民のみならず、現場の教員からも多くの反響があった。投稿者は「壱岐市の小・中学生にとって本当にプラスになる授業、教育ができることを切に願います」と切実な思いをしたためていた。

本市の小中学校で進められている「問題解決的学習」のあり方に異を唱え、校長に相談するが、「教育長を中心とする市教育委員会の指示で必ず問題的解決学習するように言われている」と、意見を聞き入れてもらえることはなかったという。

 さらに、他教員が市教委と教育長に問題点を伝えたところ、突然、大声で「最初からやる気がない(問題解決的学習を授業で)者に話をしても無駄」と罵倒されたという。

 8月6日号の取材で市教委は「各校の方針を尊重し、授業形式の強制はしない」と回答している。しかし、ある教員は「学校という組織は、教頭以下の職員は校長からの職務上の命令に従う義務があり、校長が市教委から指導を受けていれば、結局は問題解決的な授業をしなければならない。授業形式の強制がないと感じる教員は一人もいないのではないか」という。

 問題とされる「問題解決的学習」とは、毎回の授業で児童生徒に出させて決めた課題を、自分たちで調べて解決するという文科省が薦める授業形式。一見、画期的な授業形式に思えるが、「基礎学力につまずきのある児童・生徒、つまり低学力の子ども達はついていけない。すべての教科で、この授業をあてはめることには無理がある」とされる。

 このことについて、市教委は「県内他校でも同様に行なっている。本市独自の授業形式ではない」と回答したが、教員からは「授業形態は市教委作成で本市独自のもの」と反論があった。

 さらに市教委は「生徒の自立性につながるもの。教師からも好評だと聞いている」と回答。これに対して、現場教員は「市教委作成の冊子によって授業を進める教員はやり易いのかもしれないが、好評と感じていない教師が圧倒的多数」だと指摘している。

 

教育長から教員への威圧行為は本当か

 8月6日の投稿には「児童・生徒と直にあって接している現場教師の意見を一切聞かず、言わせない点」が問題とある。直接、市教委や教育長に提言をしても聞き入れてもらえず、「批判した教員は、全く希望していない学校に人事異動をされたりしている話も聞く。自分の意にそぐわないと大声で罵倒する例は何度もあった」ともいう。

 今回、新たに届いた投書では「現在の市の教育界で、言論の自由はない」と断言する。当紙に電話で寄せられた意見にも同様に「意見を言いたいが、その後にどのような報復を受けるのかわからない」と恐怖を訴える声もあった。

 また、本市に新たに赴任した教員は、教育長の元に赴き、全員面談をさせられるという。「順番が来るまで数時間も待たされ、面談では壱岐市の教育理念を延々と聞かされる。納得ができない部分があっても反論はできない」という。面談自体が悪いことではないが、なぜ教員から不評なのか。この理由も市教委と教育長は把握しているのか。

 

結局は子ども達が被害者だ

 これらの出来事を訴える教員と、市教委の回答が真っ向から食い違うのはなぜなのか。教育組織自体が機能していないからではないか。このような組織の下で授業を受けねばならない子ども達は、大人たちの都合による被害者でしかない。この状況を教育関係者はどう思っているのか。事実ならばもはや怒りしかない。

 おそらく今後も教育現場からの内部情報や投書、意見が続いていくものと思われる。改善すべきは改善し、反省すべきは反省し、引くべきは引く。この当たり前のことができないのであれば、もはや教育組織を一から構築し直さねばならない。

 子ども達のより良い授業形式の確立と、卒業していく生徒やこれから入学してくる子ども達の将来のため、徹底的に正してもらわねばならないことを本市の教育組織には要求する。新たな内部情報、あるいは事実と反する旨の反論があれば連絡を待つ。

※寄せられた投書は本紙に掲載。