2025.6.09災害時の防災食備蓄数を確認

大規模災害に備えた自治体の備蓄率調査、市の把握不足に苦言

 

 昨年1月に発生した能登半島地震や、2016年に起きた熊本地震、2011年の東日本大震災など、近年は大規模な地震が頻発している。また、毎年の大型台風発生や線状降水帯発生による豪雨被害など、かつては異常気象といわれた現象は、今や当たり前になりつつある。地震や台風は特別な出来事ではなく、私たちの生活に影響を及ぼすことを頭に入れておかねばならない。漫画が元ネタの「7月に日本周辺で大災害が起こる」――この不穏な噂はアジア各地にも広がり、今夏、台湾や香港で訪日を控える動きもある。起きるか起きないかはさておき、日ごろから災害に備えることは被害を最小限に抑えるために必要だ。

 

地震や台風などの災害が多発する昨今、政府は1月に防災体制の強化に向けて、災害対策基本法などを改正する法案の概要をまとめた。各自治体に対し、防災食や簡易トイレといった災害用物資の備蓄状況の公表を義務づけることなどを盛り込んだ。

 本市の備蓄状況については、県が毎年発表する「災害時の応急生活物資の備蓄状況等一覧(2024年4月)」で見ることができる。食料品や飲料水、段ボールベット、衛生用品などの物資の備蓄状況を公表している。

 同一覧の食料欄で、県内各自治体の多くは白米やパンの缶詰、レトルトご飯など大量の防災食(非常食)が用意されているが、本市の場合、表記がなく空欄だった。

 また、保存飲料水500㎖480本、乳幼児用紙おむつ1320枚、大人用紙おむつ510枚、生理用品7200枚 、間仕切りパーテーション580枚、毛布395枚とあり、特に飲料水の備蓄量にも不安が残る記載だった。

 一応、保有資材や機材、技術者の緊急出動による支援などに市地域防災協力部会や、生活必需物資に諏訪市などとの提携、物資の供給にイオンストア九州との提携があるが、大規模災害時にどこまで対応が可能なのかは不明だ。数人の市民にも災害時の備蓄状況を聞いたが、ほとんどは用意していないようだ。

 この状況について、市危機管理課に問うと「これまで正確な備蓄数が公表できていなかった。市民には申し訳ない思い。今回、令和7年度公表分に合わせて把握に努めた」と答えた。前市長時から「市民の安心安全は、行政の責務」と繰り返し発していただけに、不安感が残る。

 

今回の把握でわかった正確な備蓄数

 取材でわかった市危機管理課(先月30日時点)の把握による備蓄品の内訳は、食料品は米1480食、菓子類200食、飲料水500㎖は、昨年のほぼ倍で960本、毛布362枚、間仕切りパーテーション621枚。幼児用紙おむつ、大人用紙おむつ、生理用品、備蓄マットは前年通り。

 県公表の記載項目以外にも、ベビーベット22台、段ボールベッド13台、簡易ベッド40台、自動ラップ式トイレ2台、車椅子12台、スポットクーラー23台、石油ストーブ20台、大型扇風機104台、発電機21台、投光器24台、マスク8万4750枚など。能登半島地震などで、避難所生活の問題として取り上げられていた簡易トイレは、今後の予算で購入予定だという。

 国と県が推奨する「災害時の物資備蓄等に関する基本方針」では、人口5㌫の3日分の食料などの備蓄が望ましいとしている。本市の人口2万4千人をこの基準に当てはめた場合は、食料2160食、飲料水1540㍑(2㍑ペットボトル770本)とされる。備蓄は5~7年の期間で入れ替えることになる。

 今回の取材を契機に、改めて市が公表した備蓄品だが、災害はいつどこで起こるかわからない。行政として積極的に公表し、市民の安心安全を守るため、常に正確な把握に努めてもらいたい。取材を通し、本市の備蓄はひとまず安心であることを確認した。