2021.11.16来年度から印通寺港整備の考え
白川市長、中村法道県知事に対して10項目の要望書を提出
白川博一市長と豊坂敏文市議会議長、山本啓介県議会議員は4日、長崎市の県庁で中村法道知事に対し、印通寺港施設整備や洋上風力発電など再生可能エネルギー導入促進、磯焼け対策への支援拡充など、10項目の要望案を記した要望書を手渡した。印通寺港整備の要望で、白川市長は「運搬船の大型化により水深が不足し、船底の損傷や他港での停泊など不便を強いられている状況」と説明し、中村知事は「マイナス6㍍岸壁泊地の早期事業化に向けて前向きに検討を進めていく。来年度の新規事業に提案したい」と、前向きな回答を示した。
市は県に対して、市の抱える課題を前に進めるため、毎年この時期、支援や予算措置を求める要望書を県知事へ手渡している。今年度の要望書には10項目が記された。
白川市長は中村知事へのあいさつで、「県に対しては本市の振興発展のための支援を賜り感謝を申し上げたい。これまでの要望では、道路整備や架線の整備に取り組んでいただけた。昨年要望した郷ノ浦港のジェットフォイル専用浮桟橋の整備、初山漁港施設整備を本年度新規事業として採択し対応をいただいた」とこれまでの実現に向けた動きがある要望について、中村知事へ感謝を伝えた。
今回の要望書について白川市長は「価値観やライフスタイルの多様化により、人の関わりの希薄や地域の少子高齢化によるコミュニティの維持存続が危ぶまれる。そのため、まちづくり協議会の設立促進にも邁進している。国が推進するデジタル社会の実現に向けた取り組みに則し、本市では4月に市デジタル化推進本部を立ち上げ、行政などの効率化を目指している。今回の要望には、自治体DXの推進についてを新たに加えた」と説明した。
印通寺港施設整備に前向きな回答
印通寺港の港湾整備については、第一線防波堤である沖防波堤の補強、反射波対策として消波ブロック設置や、マリンパル壱岐前の本町地区岸壁・泊地の大型運搬船などの大型化に伴うマイナス6㍍の水深確保ができる岸壁整備の早期完成を要望した。
同港は、唐津と壱岐間を結ぶ国道フェリーが就航しているとともに、大型運搬船などの基地としても発展し、漁業にも盛んに活用されている。
現在、祝町地区にマイナス6㍍岸壁が整備されているが、同港は静穏度が低いため、時化の時は安全に係留できない状況にある。マリンパル壱岐前の岸壁は、マイナス3・5~4・5㍍の水深しかなく、船舶の大型化により満載時喫水水深の深度が増大し、船底を損傷することも度々あり、入港が困難となる問題を抱えている。
さらに、沖防波堤は2005(平成17)年3月の福岡西方沖地震の影響から防波堤にずれが生じ、海上時化や強いうねりが沖防波堤にあたり反射波が生じているとの声が、地元漁業者から上がっている。
中村知事の回答
「同港の港湾整備は昨年も同様の要望をいただいた。沖防波堤は令和2年度中に水中調査を実施し、現状の確認を行なっている。本年度には台風などによる波防の安定性を確認した。防波堤からの反射波の状況もあり、対策方法について検討を進めていく」と述べ、現在県が進めている状況を説明した。
今後の方針では「係留施設・泊地の整備は、運搬船の大型化により水深が不足し、船底の損傷や他港での停泊など不便を強いられている状況は理解している。安全安心な停泊などができるよう、マイナス6㍍岸壁泊地の早期事業化に向けて前向きに検討を進めていく。来年度の新規事業に提案したい」と前向きな回答を示した。
洋上風力発電などの導入促進
昨年度から要望書に加わった「再生可能エネルギーの導入促進」では、洋上風力発電などの導入促進に対する支援を再度盛り込んだ。
市は今年、洋上風力発電や再生可能エネルギーに関する認識や意見についての市民アンケート調査を実施した。集計から、再生可能エネルギー導入では約78㌫が必要であると感じ、洋上風力発電の認知度は約48㌫の結果だった。
このことから白川市長は「洋上風力発電により、市民から二酸化炭素排出削減効果に期待が寄せられていることが分かった。今後はアンケートの分析結果を参考にしながら、漁業者や地域と共生が可能な洋上風力発電導入に向けて取り組んでいく」とし、中村知事へ「洋上風力発電など再生可能エネルギー導入促進に向けた積極的な支援をお願いしたい」と要望した。
中村知事の回答
「地域脱炭素ロードマップに基づく脱炭素先行地域では、県内から一か所でも多く選定ができるよう、積極的に取り組めるような環境作りに努力していきたい。再生可能エネルギー導入促進は壱岐市民と共に取り組み、検討を進めていく」とした。
磯焼け対策への支援の拡充を
本市近海では、近年の温暖化による高水温の影響や植食性動物の食害、台風などによる藻場の破壊などによる磯焼けが問題となっている。そのため、藻場の早期回復により水産業振興や漁業者の所得の向上を図るため、磯焼けの原因となるイスズミなどの植食性動物の駆除に関する支援の拡充を要望した。
市は、イスズミ捕獲に関する助成制度を令和元年度に創設し、令和2年度から海藻の増養殖対策として仕切り網などへの助成を実施している。また、効率的に対策関連事業を推進するため、市内5漁協、県、市で母藻を漁協間での融通を可能にする「壱岐海域における母藻供給ネットワーク構築に向けた連携協定」を締結するとともに、関係機関で組織する「市磯焼け対策協議会」を設立するなど、磯焼け対策を積極的に取り組んでいる。
中村知事の回答
「県では藻場増植とともに、漁業者団体が取り組んでいる食害生物の駆除など藻場の保全回復活動の支援措置を講じている。昨年度からは新たに壱岐栽培センターに委託して高水温に強い種苗の供給体制の整備の推進、食害に強い増植施設の工法開発に取り組むなどの対策を強化している。
今夏、郷ノ浦町の一部で藻場が回復したとの報告もあり、これまでの取り組みが実を結んだ可能性があるのではないかと考える。
海水温上昇などの環境変化に対応した藻場の回復対策に力を注ぎ、早期の藻場回復につながるよう、漁業者、漁協、市町と連携して事業促進を図っていく。同時に国への要望や働きかけも継続する」と回答した。