2025.6.02市議選に向け提言、今こそ本気で壱岐を変える時
7月20日投票の市議会議員選挙、1票の重要さ
市選挙管理委員会(市選管)は、任期満了に伴い7月13日告示、同月20日投票の市議会議員選挙を行うことを発表した。有権者数は3月1日現在2万256人(市選管調べ)、定数はこれまで通り16議席。現職市議の任期満了は8月6日。投票日は参院選の日程次第で変更する可能性もある。市民生活の困窮や生きづらさの声が聞こえる昨今の本市では、この状況を打開するため、まずは市政の改革が望まれる。市民の生活を変える力が政治にはある。そう信じて、この4年間の市議会の評価とともに、あるべき市政の姿を提言する。
島を変える本気度が見えた対馬市議選
本市の市議選に先立ち対馬市は18日、市議選に定数17議席に対して現職13人、新人9人の計22人が立候補した。新議員の内訳は現職10人、新人7人。公認の党派別では自民3人、立憲民主1人、公明1人、無所属12人。対馬市選管の調べでは、当日有権者数は2万2583人。投票率は74・3㌫、前回を1・56ポイント下回った。
対馬市の選挙を見て思うことは、定数17に対し新人7人の顔ぶれになったこと。世代交代とともに、現状の対馬市を変えたいと思う市民の思いが現れた結果であろうと推測する。少なくとも約半数の顔ぶれが変わった対馬市議会への期待は高い。
本市と対馬市は言わずもがな隣の島であり、文化や歴史、産業や観光、経済面で本市が抱える課題と非常に近い。例えばジェットフォイルの更新など、ともに意見の一致がなければ前に進めない、共通の課題を持つ。その対馬市が「このままではダメだ。島を変えなければ」との思いの中で市議選が行われ、先のような民意が示された。
市民の期待に至らなかった議会改革
本市の場合はどうか。長らく市議会を見てきた記者だが、市議会内部から本気で改革を進めようとする動きは皆無に近いように思える。市議会は自ら議会改革を掲げた議会改革特別委員会を2022年に開いた。しかし、決めたことは市議会のユーチューブ(動画配信サイト)の配信や、育休の制度、会派制など。ユーチューブ配信は現在、停止したままだ。
そして、同委員会でも審議された議員定数案。定数16人を14人とする協議を重ねたが、結果は現状のまま16人で審議を終えた。議員定数の議論は、2021年の市議会6月会議で議員発議もあったが、現状から変わりはなかった。
この判断に、市議会は「削減は市民の声が届かなくなる。議会機能が低下する。市議選前で時期が適切ではない」などの理由をあげた。市民の間でも賛否はあるが、本紙調べで割合的には定数削減が多くを占める。市民からは「どの時期が適切なのか。本市をいくつの地域に分けて考えているのか。4町合併以降、本市は一つとして考えねばならないのではないか」など反論が起きた。
市議会審議はまず、民意を汲み取り、市民が何を考えどのような市政、本市にしたいのかを十分に吟味した上で判断せねばならない。議員定数案に限らず、他の議案にも言えることだ。
民意が反映された採決をしたか
この4年間、市議会の判断に疑問だった案件がいくつかある。
市の事務処理や手続きなど、ずさんさがあまりにも多いため詳細は省くが、2023年に起きた、郷ノ浦町に建設予定だった認定こども園建設計画は、市議会の判断が適切だったのか、今でも疑問が残る。
問題はあまりにも多岐にわたるため、ここでは書ききれないが、一点だけ記す。
2022年の市議会6月会議で突如、同園建設案の議案があがり、市議会はわずか2週間ほどで採択した。この時の採決は、建設に賛成12、反対3(議長を除く)。その後、同園建設予定地は、土砂災害特別警戒区域に隣接、予定地前の道路は朝夕の交通量が多く、事故も多発していることがわかった。
しかし市は、議決を得たことを理由に計画を進めた。建設予定地が保育園運営に不適切な地だと知った市民は、反対運動をするなど拒否を示し、この問題は、約1年近く続いた。結果的に市民団体などの活動により、建設計画は白紙になったが、議案があがった時点で、市議会が適切な判断と調査さえしていれば、問題は長期化することはなかった。
認定こども園計画の頓挫は、昨年から今年にかけて問題となった、柳田・志原のへき地保育所閉所問題につながった。これも詳細を書くには枠に限界があるため省くが、市と地域住民との溝を生む事態になった。
市議会に関する点で言えば、昨年の市議会9月会議の採決だ。市は、柳田・志原保育所の閉所に関する条例改正を上程。採決は議長を除く15人で行われ、閉所に向けた条例改正に賛成した議員は8人、反対した議員は7人。先に、総務文教厚生常任委員会は否決と判断していたが、本会議で覆された。
一方で、市民団体が市議会に求めた、同保育所の一時存続の請願も賛成8人、反対7人で採択。この結果は、議会採決の矛盾を生むことになった。要するに、閉所の条例案に賛成、一時存続の請願も賛成。
結果的に、条例改正案可決を経て市は閉所に突き進み、市民団体が提出した請願はほぼ無に帰した。この時に受けた市民団体や地域住民、保護者らの落胆は大きなものだった。
後付けでいくらでも言い訳や理由はできよう。しかし、議会は市民の代表者であり代弁者。たとえ一部の市民であっても、民意に目をつぶる市議会であってはならない。
来月4日、市議会議員一般選挙立候補予定者説明会が開かれる。そこで、おおよその立候補者が決まる。果たして本市の次期市議選はどのような顔ぶれなのか。厳しい言い方をしたが、現市議会のすべてが否定的なわけではない。これまでの良い部分は大いに残し、変えるべき部分は大胆に変える。これができるのが選挙であり、市議選での市民の1票にすべてがかかる。