2023.7.18女子生徒ら6人溺れ、1人が一時意識失う
勝中生徒らが海岸清掃後に遊泳、沖の深みにはまり溺れる
5日午後1時10分ごろ、勝本町の辰ノ島海水浴場で「女子生徒が遊泳中に溺れた」と市消防本部から壱岐海上保安署に連絡があった。女子中学生1人が遊泳中に溺れ、一時意識不明の状態に陥った。壱岐海上保安署などによると、市内の女子中学生4人が沖で溺れ、救助に向かった40代の男性教諭、50代の男性漁協職員も巻き込まれる形で計6人が溺れた。生徒4人は清掃活動の合間に遊泳していて、深みにはまったという。病院への搬送時には6人とも意識があり、命に別条はない。長崎地方気象台によると、当日、本市全域には強風注意報が発令されていた。
事故当日は、勝本中(奥田千穂校長、全校生徒127人)の124人の生徒が校外学習の一環として、ボランティアで教職員と海岸を清掃していた。同中によれば、夏場の観光シーズンを前にした清掃は毎年恒例として20年以上行われているという。当日、海岸では中学校の生徒や教諭、保護者ら約160人が清掃活動を実施。女子生徒4人は昼食後、自由時間のときに海に入って溺れた。
同町漁協職員が、回収したごみ運搬用の小船2隻で海上から監視していたところ、溺れている生徒を発見し、救助した。当時は溺れた生徒以外も海に入って遊んでいた。
現場に居合わせた人の話によれば、始めに溺れた女子生徒4人は、砂浜から沖合15㍍の場所で海の深みにはまったという。同海水浴場は遠浅の砂浜として知られるが、地元の人の話では「沖合にはいきなり深みがある場所がある。地域の人なら知っていることだが、遠浅と思って油断すると、足が届かない場所にはまり溺れる危険がある」と話す。
事故発生時の天候は曇り、生徒らが作業に入った後に風速約10㍍の強風が吹き、雷と強風の注意報が発令。事故を知った市民は「なぜこのような危険な日に辰ノ島に渡ったのか。危機管理はどうだったのか」と話すが、渡船前の段階までは注意報はなく、運航した漁協側も状況把握はしていたが、突然天候が悪化した。同校は6日に説明会を開き、保護者らに状況と、今後、事故を起こさないための対策や、生徒への精神的な対応などを説明した。
奥田校長は「事故を重く受け止め、今後はスクールカウンセラーなどと生徒の心のケアに努める。今後このようなことがないように全職員で教育活動を進めていく」と話した。
事故の4日前、50人ほどで同じ場所を清掃したチーム防人の中山忠治代表は「以前、同校に共同清掃を提案したことがある。各自水着の準備もあったというが、清掃目的とともに泳ぎもあり気が緩んだのではないか。あの海水浴場は一部に深みがある場所もある。そのため、私達が清掃をする場合は監視と救命具の準備をしている。監視体制の徹底は必須」という。
観光関係者は「辰ノ島は、夏から秋にかけて観光客や海水浴客でにぎわう場所。コロナ禍から明け、ようやく観光が動き始めるこの時期に、客の動向に影響なければいいが」と苦痛の表情を浮かべた。