2019.10.15壱岐病院経由の路線バスが1日から運行
高齢者に優しい島へ。印通寺~郷ノ浦間の路線バスが一部の便で壱岐病院経由に
市内各所を走る路線バスの運行で、印通寺~郷ノ浦間の一部の便が今月1日から壱岐病院を経由している。また、この変更に伴い、登山口から壱岐病院までの乗合タクシーは先月30日に廃止となった。これまで、石田方面から壱岐病院までのバス路線は直行便がなく、不便を強いられていたが、今回の変更により高齢者の免許返納や身内に送迎者がいない通院者に対して、利便性の改善が図られた。
警察庁は、高齢化社会の問題として加齢に伴う運転機能の低下による高齢ドライバーの事故が相次ぎ、運転免許証の自主返納を呼びかけている。本市をはじめとした地方自治体や離島は、自動車が生活の足として広く使用され、「高齢者も運転をしなければ生活ができない」との声が挙がる。しかし、高齢者による危険運転は後を絶たず、社会的な問題に発展していることも事実だ。本市在住で65歳以上は約9000人を超え、市内全人口の30㌫を上回る。今後はさらに増加の見込みとするデータがある。
本市が抱える課題は、返納者や身内が市内にいない独居老人に対する地域を挙げての移動手段の確保。特に病院への通院は、公共交通機関に頼らざるを得ない場合が多いが、市内一部地域では、バス路線などの公共交通に不便を感じるという市民の意見も多かった。
このような課題に対して、市は今年3月に策定した「市地域公共交通再編実施計画」で、上位関連計画の一つとして、「壱岐病院への直行便がない石田地区の路線については、直接乗り入れの検討のほか、現行ダイヤの調整により乗り継ぎ改善をする」と明記している。
市の公共交通は、島内全域をカバーする路線バスを中心に、定期航路、タクシーなどにより構成され、長年に渡り市民の身近な移動手段として活用されてきた。しかし、人口減少や少子高齢化により世代別の利用頻度差は著しい。ただ、高齢者の免許返納や運転技能の衰えなどで、必要頻度は高まっている。このような中、同計画は持続可能で利便性の高い公共交通体系としての維持・活性化を図ることを目的にしている。
また、計画では「実態やニーズに即した路線の統廃合や新設を行う」ことや、利用者が極端に少ない低需要路線やスクールバスと重複するバス路線は、地域特性に応じた予約制乗合タクシーやスクール混乗、コミュニティバス導入など「新交通システムの導入と効率的で利便性の高い運行を行う」としている。
昨年4月、計画案に対する市民からのパブリックコメントでは、「高齢者のバス利用の意識を喚起し、さらに利用しやすいルート再編(停留所位置の検討含む)を行ってもらいたい」「バス停から遠い地域への対応や、よく利用する施設へのアクセス(例えば石田から壱岐病院直通がないという問題)も考慮する必要があると考えるため、追加をお願いする」などの意見が寄せられていた。
また、今年3月に行なった「市地域公共交通活性化推進協議会」では、公共交通機関の利用が難しい運行空白地区への対策についてなどの協議を行い承認している。この協議では、これまで通院者から問われてきた市内各所から壱岐病院への直行便や、乗り継ぎによる利便性の向上も強化することを決めた。将来的な運行再編は、壱岐交通(株)との継続的な協議を行い実現可能なものから段階的に着手する予定とした。