2026.3.09令和8年度当初予算案と組織改編を発表
「子育て支援」と「社会基盤」に重点、令和8年度予算案まとまる
先月26日にあった定例記者会見で、市は令和8年度の当初予算案および大規模な組織機構の改革案を発表した。新たな時代に対応した「市民生活の利便性向上」と「持続可能な島づくり」を掲げ、小中学校の給食費の完全無償化や、行政組織の再編など、多岐にわたる事業が盛り込まれている。改革案などは、3日に開会した市議会定例会3月会議で議案上程され、審議が行われる。
人口減少と物価高に立ち向かう総合対策
市は令和8年度当初予算案を発表した。人口減少と高齢化の進行、長引く物価高騰という二重の逆風を背景に、「選択と集中」による重点配分を打ち出した編成となった。限られた財源の中で、将来を見据えた投資と足元の生活支援をどう両立させるかが問われる内容だ。
子育て・若者支援は重点分野の一つ。学校施設整備や給食費支援など子育て世帯の負担軽減策を継続し、定住促進策も展開する。少子化が進む中、子育て環境の充実は地域存続の基盤と位置付けられる。
産業分野では、農水産業など中小事業者への支援を継続。燃油や資材価格の高騰対策に加え、消費喚起策や観光振興を通じて地域経済の底上げを図る。島内経済循環の強化と外貨獲得の両立が鍵となる。
防災・インフラ整備も重要課題だ。老朽化する公共施設や道路などの維持管理を計画的に進め、安全・安心の基盤を守る。災害への備えも強化する。
令和8年度予算案は、人口減少社会と物価高騰という厳しい現実を踏まえつつ、持続可能な地域づくりへの方向性を示すものとなっている。当初予算案額は247億5千万円。前年度比1・9㌫減(4億7千万円の減少)となった。特別会計を含む合計額では325億9438万2千円となり、全体では前年度比1・8㌫減の規模となっている。
主な議案と当初予算案
■行政組織の刷新。3部を改称、窓口を専門化
市は、多様化する市民ニーズに的確に対応するため、6月1日付で組織機構を見直す。 「市民部」を「市民生活部」へ、「保健環境部」を「健康未来部」へ、「建設部」を「社会基盤部」へとそれぞれ改称し、分掌事務を整理する。
特に健康未来部(子育て支援課含む)は芦辺庁舎、社会基盤部(環境衛生課含む)は勝本庁舎へと移転・集約し、妊娠・出産から高齢者支援、インフラ維持までを専門的に担う体制を整える。
【記者からの質問】
-部名称変更による具体的な機能強化は何か。看板のかけ替えに終わらない根拠は。
(市長)時代に合わせた組織、効率的効果的な組織にする。福祉と教育の連携を深めるため、芦辺庁舎に集約、市内のインフラを維持するために勝本庁舎に集約する。分庁方式の難しい部分ではある。
-組織改編に伴う人件費や移転経費はどの程度発生するのか。
(総務部長)建物内部の大幅な整備などはない。多額な移転経費は発生しない。
■子育て・教育:給食費無償化と新たな支援策を提示
子育て世帯の経済的負担軽減を最優先事項とし、以下の施策を打ち出した。
小中学校の給食費完全無償化。米価や材料費の高騰が続く中、国の交付金等を活用し、令和8年度から小中学校ともに給食費を無償化する。ただし、中学校給食費は、国の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を活用するため、8年度のみ無償化。
「こども誰でも通園制度」の創設。就労要件を問わず、時間単位で柔軟に利用できる通園事業を石田こども園で実施予定。利用可能定員は0歳児1人、1歳児1人、2歳児1人。1時間当たり300円。
島外出産などの交通費助成では、医療的理由で島外での健診や分娩が必要な妊婦に対し、交通費や宿泊費(1泊最大1万円)を助成する。
【記者からの質問】
-国の交付金終了後の財源確保は。中学校は単年度対応だが恒久化の方針は。
(市長)給食費無償化は各自治体首長の総意でもある。まずは小学校だったが、今後は中学校も認めてもらえるよう国に要望したい。8年度は、物価高騰の臨時交付金があったから活用した。中学校も恒久的な無償化を望んでいる。
■テクノロジー活用による課題解決、医療DXと野生動物対策
先端技術を導入した課題解決が主な事業となる。
高齢者などの在宅医療や通院手段の課題が深刻化する中、「医療DXの実証」は、 アップルウォッチなどのウェアラブル端末を活用し、遠隔医療の導入に向けた実証実験を行う。予算額は550万円。
野犬問題の解決として、ICT野犬捕獲システムを導入。殺処分ゼロを目指し、遠隔監視・操作が可能な大型罠を導入して捕獲の効率化を図る。
英語教育へのAI活用として、 中学校で生成AIアプリを活用し、生徒の英語発話量を増やす取り組みを開始する。本県では長崎市に次いで二番目の取り組み。
【記者からの質問】
-アップルウォッチなどを用いた遠隔医療だが、高齢者の多い地域で、操作性やネット環境の課題をどう克服するのか。
(市長)まさにその課題を実証実験で確認していく。
■再生可能エネルギー・水素実用化実証事業
令和7年度に開発した水素関連設備と、太陽光発電設備などを壱岐病院に導入。医療分野での実用性に関する実証に着手する。経営経費の削減、より良質な医療サービスの提供、収益や雇用者所得の向上を実現する。
【記者からの質問】
-総予算は約3・2億円で、全額が国庫支出金(補助金)で賄われている。補助金が終了した後の維持管理コストを市がどう負担していくのか。また「経営経費の削減」という目標が具体的にどの程度の規模(削減目標㌫など)で見込まれているのか。
(市長)電力を水素でまかなうなど、病院にとってはプラスになる。質問にある事項は、実証で明らかにしていく。数百万円単位の経費削減にはなるかと思う。
■インフラと地域振興。芦辺・勝本の拠点整備
芦辺港ターミナル周辺整備は、ジェットフォイル乗場の移設に伴い、周辺の舗装や駐車場整備を継続する。予算額8500万円。
勝本海業プロジェクトとして、 辰の島遊覧船の発着所移転に伴う勝本港の埋め立て工事や拠点施設の設計に着手する。
【記者からの質問】
-遊覧船発着所移転で商店街回遊性が本当に高まるとする根拠は。
(市長)現在、 辰の島遊覧船の発着所には年間約2万人が来ている。乗り場が変わることで、この2万人が訪れる。今後は2万人が4万人、さらに増えることに期待する。
