2024.7.23ラージボール卓球で全国制覇

85歳以上の部全国1位の偉業。スポーツを生きがいに、郷ノ浦町の古田早苗さん

 ラージボール卓球の全国大会「第37回全国ラージボール卓球大会」が5~7日、福岡市総合体育館で行われ、郷ノ浦町の古田早苗さん(85)が85歳以上の部に初出場し、優勝を勝ち取った。スポーツを通して、人の役に立つことが生きがいと語る古田さんを取材した。

 

 ラージボール卓球は、1988年に誕生したスポーツで、ラリーを続けやすいよう通常の卓球のルールを一部変更している。一番の特徴は、一般のピンポン球よりも4㍉ほど大きく、軽いボールを使うこと。バウンドが高く打ちやすくなるためラリーが増え、初心者でも親しみやすいという。

 古田さんは、中学生から卓球に親しみ、高校生では高体連で活躍した。本市役所を定年で勤め上げた後、60代から本格的に卓球の練習を再開。実業団選手が出場する大会で好成績をおさめるなど実績を重ねた。

 ラージボール卓球を始めたのは5年ほど前で、高齢者を主体とする「ねんりんピック」出場への声がかかったことがきっかけ。2年後には市内にラージボール卓球協会を設立し、普及活動と練習を続けた。4月末の県予選で優勝し、全国大会への切符を勝ち取った。

 

満身創痍の状態で初めての全国大会へ

 最高齢部門となる85歳以上の部男子シングルスの出場選手は22人。最初は1勝できればと思っていたが、各地から出場する百戦錬磨の対戦者を見ると血がたぎった。技術では太刀打ちできないかもしれないが、壱岐の自然で育ったたくましさで勝負しようと心に決めた。

 しかし、2年前に右腕の上腕二頭筋を断裂するけがを経験してからパワーの低下を自覚している。さらに今年のはじめ、右足のアキレス腱を部分断裂し、今でも通院で治療中。先月にはコロナにかかり、病み上がりでもあった。コンディションは最悪だったが、ともに大会に挑んだ仲間たちの顔を思い浮かべ、奮い立った。

 

フォアハンドを武器に全国のライバルと真剣勝負

 準準決勝、準決勝と、気を抜くとすぐに形勢逆転されるような試合が続いた。古田さんはけがを感じさせないフットワークと力強いスマッシュ、そして相手の弱点を冷静に見極めた駆け引きで勝ち進んだ。決勝戦の福島県代表の選手は、ボールを高く上げて相手のコートに返すロビングという戦法で勝負を仕かけてきた。受ける側にとって返球が難しい球だが、古田さんは得意技の「フォアハンド」(ラケットを握った方の手でボールを打ち返すこと)で応戦。ハイレベルな戦いを制した。

 試合以外では全国の選手との交流も良い思い出となった。個人同士だけではなく地域と地域のつながりを深めることができたと感じている。

 

 大会後は体を労わりながら、週2時間ほど集中して練習している。しかし、今後の目標はまだ白紙状態だ。目標は生きがいにつながる。それは自分だけで満足するものではなく、いかに人の役に立てるかで決まると古田さんは考えている。

 「今回の優勝も自分のことだけを考えていたら達成できなかった。仲間への気持ち、長崎県や壱岐を盛り上げようという思いがあってがんばることができた」

 フォアハンドはいつでも真っ向からボールを受けて返す。古田さんは困難にも正面からぶつかり、夢を叶えてきた。卓球も人生も同じと語った。