2024.10.01イルカ連続死亡、死因究明に前進
イルカ死因、専門機関による調査報告を公表「海底の硫化物の可能性が高い」と推察
市議会定例会9月会議の20日、昨年度一般会計の決算審議のための決算特別委員会の中で、壱岐イルカパーク&リゾート(指定管理者・イキパークマネジメント高田佳岳代表)の経営状況などを公表する決算書にイルカの死因に関する記載があった。イルカの飼育で名高く、イルカパークと獣医委託契約を締結した日本ドルフィンセンター(香川県)がまとめた死亡報告書「壱岐イルカパークにおけるバンドウイルカの連続死亡に関して」によると、「海底の硫化物の可能性が高い」と推察している。
報告書には「2020年から2023年の間で4頭のバンドウイルカが治療効果なく、連続して死亡し、またその症状、経過も類似しているが、その根本的な原因が現在まで明確に解明されていない状況である」とし、同センターは死亡した4頭のイルカの死亡調査と水質や環境、飼育状況などを調べた。
死亡した4頭のイルカの経過で「それぞれ、経過は少し異なる部分もあるが、総じて海底まで行けない構造の網のいけすから出す以前は、大きな問題は起きていない。網のいけすから出して外の大きないけすで飼育を始め、数か月後から肝臓酵素が上がりはじめた。一旦は加療に反応するが再び上昇し、その後加療に反応せずに、肝障害(肝炎)となり半年から1年のうちに死亡に至るという状況が共通している」という。
死亡となる共通要因の考察として、えさに関しては「管理を徹底しており、成分検査もロットごとに行っており、問題にはなり得ない」とし、えさの問題と死亡の関連性はないことが分かった。
治療による副作用は「薬剤の投薬治療に関して、副作用を考慮すべきであるが、そもそも肝臓酵素の上昇は投薬によるものではない」とするが「ある1頭は、治療途中で与えたアンセリンのサプリは投与直後から肝臓酵素が急上昇したため、副作用が生じたと考えられる。その後、投与を中止した」とある。
トレーニングやふれあい体験による影響では「他施設と比較して、イルカの負担になっているとは考えにくい。イルカと客のふれあい実施で同様の事例が起こるのであれば、20年前からイルカを飼育して、ふれあいを実施している日本ドルフィンセンターでも、同じ問題が起きているはずである」とし、問題はないと結論付けた。
飼育環境では「湾内飼育になっており、水の動きが極めて悪い飼育環境であり、そのため、冬場水温は低下しやすい環境であると考えられる。しかし、水質に関しては、定期的に検査を実施しており、検査項目に大きな問題がない」との認識を示した。一方で、「海底の汚泥で飼育海域の硫化物が年々悪化しており、水質を調査した会社も懸念を示していた」とした。
これらのことから結論として「共通した症状で死に至る原因は、海底の硫化物が考えられるのではないか」と推測した。
イルカの死亡に関しては、市議会9月会議の一般質問で松本順子議員は「イルカの死因がまだ解明されていない状況で新たなイルカを購入したことなど、今でも多くの市民から理解を得られていない。イルカ購入先の和歌山県太地町の追い込み漁は世界的に抗議されている」と指摘していた。