2023.10.03イルカ購入費1128万円を採択

イルカ購入費予算凍結の動議を提出、凍結案に賛成議員は3人のみ

 市議会9月会議の22日、補正予算を審議する予算特別委員会(武原由里子委員長)は、イルカ新規購入費1128万円の補正予算を賛成多数で採択した。補正の理由は、壱岐イルカパーク&リゾートで6月14日、飼育しているイルカ1頭が死亡し、現在2頭になったため、新たにイルカ2頭を購入、1頭を借用する費用と運搬費など関連費用としてのもの。議員は「死亡の原因がわからないままの新規購入は、今後も死亡事案を繰り返すだけではないのか」とするが、市は「死亡の明確な原因はわからない。原因の仮説を立て、究明は継続する」とした。山口欽秀議員は「原因がわからないままの購入には賛成できない」として、購入にかかる予算凍結の動議を提出。賛成した議員は3人(山口、森俊介、中原正博議員)だった。

 

 市は、補正予算の理由を「イルカ2頭のままの運営で観光集客などに大きな影響を与える」と説明した。同園のイルカ死亡は、2019年4月25日のリニューアル以降、わずか5年間で6頭の死亡が相次いだ。今年は2月と6月にイルカ2頭が死亡。この2頭は2020年5月に導入したばかりのイルカだった。市は「新たなイルカを導入し、周遊観光の促進と観光消費拡大につなげる」とし、早急なイルカ購入の必要性を述べた。

 22日現在、同園では残り2頭のうち1頭も体調が悪化し、治療を行なっていることがわかり、現在、園内で元気なイルカは1頭のみという。この状況に中原議員は「同園の海水は、ごみや油類が流入している時がある。水質に問題はないのか。園内の海水は夏場、水温が高くなり排泄物は底に溜まる。このような環境ではイルカを放入してもまた病気になるのではないか」と質問した。観光課長は「定期的な水質検査を行い、水質異常は検証されていない。しかし、死亡例が続くことから今後、海底汚泥の成分検査を実施する」と答えた。

 森議員は、「6人いるトレーナーのうち、4人が9月末で退職する。2人体制で新たに導入するイルカ3頭を含めた計5頭の飼育は可能なのか。数年前、米国のフロリダに高額な経費をかけて研修に行っているが、9月末の退職で研修スタッフは0人となる」と指摘した。

 

森議員、指定管理者の資質を問う。「未成年飲酒の事実がある」

 さらに森議員は「同園指定管理者の高田代表は、市が連携協定を結び同園で現地事業を行う専門学校ビジョナリーアーツ(福岡市)の未成年の生徒に、数回にわたり飲酒をさせていると情報がある。市担当職員と同園スタッフとの連絡網でスタッフが市担当職員へ未成年飲酒に対する注意喚起をしたが、その後も続いた。市担当職員はその事実を知っていたにも関わらず、傍観したままだと聞く」と問い、観光課長は「把握していない」と短い回答にとどめた。

 高田代表による未成年飲酒が事実だった場合、「未成年者飲酒禁止法」に触れ、監督者(高田代表)の法的責任が発生する。事態は市側の隠蔽および、指定管理者としての資質、今後の管理者契約が問われる。さらに、高田代表は現在、離島留学制度で里親の立場にあり、里親としての適正など、多方面にも影響が波及しそうだ。

 森議員は当紙の問いに「証拠はある」と答えたことから、今後の動向にも注目だ。

 山口議員は、「過去の死亡原因を含め、明確な原因がわからないまま新規購入をするという。今後も死亡事案が続けば、マイナスイメージを生みかねない。ここは一旦立ち止まって原因の検証をすべき」と意見した。

 植村圭司議員は「これまでにイルカ購入費に要した金額は」と問い、観光課長は「過去10年のデータだが、10頭購入で2520万円の費用だった」と答えた。植村議員は「今後も死亡すれば購入を繰り返すのか。他市の事例を参考にし、第3者による調査で原因を特定すべきではないか」と指摘。観光課長は「本市にとって同園は重要な施設。イルカ購入の必要があれば、その都度予算を計上する。意見は参考にする」と答えた。

 続けて植村議員は「以前、イルカ運搬費は100万円以下だった。今回は242万円と倍以上だ。なぜか」と問い、観光課長は「昨今、輸送費が上がっているため」と答えたが、以前との比較でイルカ購入や運搬などの費用高騰の理由にも今後、疑問が起きそうだ。

 一連の議員からの質問は「死亡原因がわからないままの購入では、今後も死亡が繰り返されるのではないか」というもの。観光課長は「死亡原因の仮説を立て、究明は継続する」と回答している。

 

市長「イルカの島にする」の考え変わらず

 森議員は白川博一市長に対し「市長は再三、公の場で『壱岐をイルカの島にする』と公言しているが、今後の同園にどうビジョンを持っているのか」と問い、白川市長は「イルカは本市の観光にとって大きな目玉であると今も思っている。考えに変わりはない」と答えた。

 さらに「イルカ死亡で市民には心配をかけているが理解を願いたい。今後も、同園の継続に向けていきたい」と述べた。