2024.10.15イルカ死亡の検証、新たに塩分濃度の可能性を示唆

 昨年、3頭のイルカの死亡が立て続けに起きたことから、壱岐イルカパーク&リゾート(以下、イルカパーク)の水質や飼育環境の確認、死亡したイルカの原因などを検証するため市は2日、市役所郷ノ浦庁舎で第2回イルカパーク管理・環境等検討委員会(東京農業大学准教授・川嶋舟委員長)を開いた。8月2日に開いた第1回目の会合では、死亡したイルカの治療薬投与の量や、インストラクターの経験値、死亡解剖などの解明状況などを話し合った。今回は、専門家による施設内の水質環境や冬場の水温、気候による水質の変化などから、いくつかの死亡原因の仮説を立てた。

生物学の専門家などによる第2回イルカパーク管理・環境等検討委員会

 同委員会の構成委員は、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の天野雅男教授、国立環境研究所で生物工学や水質・環境化学などを専門とする牧秀明主幹研究員、イルカの飼育管理を専門とするR-Dolphinの駒場昌幸代表など。イルカの生態に詳しい専門家がそろい、各自の見解を述べた。

 市議会定例会9月会議の決算特別委員会で、イルカパークの決算報告書内の「壱岐イルカパークにおけるバンドウイルカの連続死亡に関して」によると、水質を調査した会社は「海底の汚泥で飼育海域の硫化物が年々悪化している」として懸念を示していたことから「海底の硫化物の可能性が高い」と推察している。

 今回は、新たに興味深い推測があった。牧委員の見解では「同施設は、浅瀬などにより外洋と隔たれていることから、大雨になれば湾内表層の海水の塩分濃度が低下したデータがあった。いわば淡水のような状況になる。低塩分によるイルカへのストレスや体調悪化が考えられる」という。さらに「他国のデータにはなるが、川に閉じ込められたイルカが大量に死んだ事例がある。肝臓にも悪影響を及ぼした可能性はある」と付け加えた。

 今年3月以降に施設プール内に設置した測器記録から、表層の塩分が5月以降の降雨により低下、3月には塩分濃度は1㍑の海水に含まれる塩分が約34㌘だったのに対し、7月12日ごろは最低19㌘まで低下、8月終盤まで20㌘台のままだった。このことから牧委員は「肝機能の低下は冬季が多い。表層の塩分濃度が下がった夏季の影響が蓄積され、冬季に異常が現れたのかもしれない」との見解を示し、「年間を通じたデータで検証すべき」とした。

 これまでの検証で示された「海底の硫化物」「表層の塩分濃度の低下」が原因であれば、同施設の設置状況による原因が高いことになる。イルカの飼育に適した施設なのかが問われる可能性もある。

 同施設は1995年より、本市の観光施設として運営が始まった。2019年4月にリニューアルされ、指定管理者としてイキパークマネジメントの高田佳岳代表が運営を続けている。昨年は3頭のイルカが死亡し、リニューアル後から計7頭の死亡が続いているが、リニューアル以前にもイルカの死亡例は起きており、死亡原因の究明が急がれていた。

 高田代表はリニューアル後、イルカに負担をかけない飼育プログラムや、新鮮なえさの供給、獣医師によるイルカの健康調査と治療などを継続した。昨年夏には、水質や汚泥の調査を行い、環境調査を試みたが専門家の知見でも異常は見られなかった。イルカの死亡調査では、肝臓の数値に異常が見られたことが共通だという。