2024.8.15イルカ死亡の原因など検証

生物学の専門家などによる初のイルカパーク管理・環境等検討委員会

 

 昨年、3頭のイルカの死亡が立て続けに起きたことから市は2日、イルカパーク施設の水質や飼育環境の確認、死亡したイルカの原因などを検証するため、壱岐の島ホールでイルカパーク管理・環境等検討委員会(川嶋舟委員長)の初会合を開いた。同施設の指定管理者、イキパークマネジメントの高田佳岳代表は、「イルカに負担をかけないトレーニングや、えさの見直し、専門の獣医師の見解など、さまざまな対応をしてきた。リニューアル以前の飼育環境も調べた。それでも昨年はイルカの死亡が続いた。イルカのためにも同委員会の意見を真摯に受け止め、施設運営に活かしたい」などと述べた。

 

 イルカの飼育管理や生育環境への見識を有する専門家などの委員がそろう同委員会の第1回目の会合で、委員の紹介と委員長の選出を行なった。構成委員は、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の天野雅男教授、国立環境研究所で生物工学や水質・環境化学などを専門とする牧秀明主幹研究員、イルカの飼育管理を専門とするR-Dolphinの駒場昌幸代表など、イルカの生態に詳しい専門家に加え、勝本漁協や市農林水産部、企画振興部の職員らが顔をそろえた。委員長は、東京農業大学で獣医学を専門にする川嶋舟准教授が務めることを全会一致で決めた。委員の任期は来年3月31日まで。

 篠原一生市長は「続いたイルカの死亡事案は、市としてももどかしい思いがある。死亡事案を重く受け止めていることから、同委員会設置を決めた。委員の専門的な知見で、死亡の要因や対応策、イルカパークの管理環境などの助言をいただきたい」と述べた。

 同施設は1995年より、本市の観光施設として運営が始まった。2019年4月にリニューアルされ、指定管理者として高田代表が運営を続けている。昨年は3頭のイルカが死亡し、リニューアル後から計7頭の死亡が続いている。

 高田代表はリニューアル以前の状況を調べ「2007年以前の同施設の飼育データが残されていない。本来ならば貴重な資料、例えば日本初のオキゴンドウイルカとバンドウイルカの混血種が生まれていたのかもしれない資料がない。イルカの死亡に関する重要なデータもあったかもしれない」とし、指定管理者を担う以前のデータ紛失を公表した。

 リニューアル後、同施設ではイルカに負担をかけない飼育プログラムや、新鮮なえさの供給、獣医師によるイルカの健康調査と治療などを継続した。昨年夏には、水質や汚泥の調査を行い、環境調査を試みたが専門家の知見でも異常は見られなかった。

 これまでのイルカの死亡調査では、肝臓の数値に異常が見られたことが共通だという。この事実から高田代表は健康管理問題では適切な運動量、えさ、治療薬の量など、海洋環境問題では汚染物質や水温、海流の停滞などを想定した。

 特に施設内の海は、沖への出口付近が極端に浅く、施設内は約10㍍の水深があることから、施設内の海中は低層が低温であることや酸素が薄いこと、硫化水素の蓄積などを推測した。また、海洋からの潮の流れが滞留しやすいことも挙げた。高田代表は「これらの仮説は私が思う部分が多い。ぜひ、専門家の知見で今後の検証をお願いしたい」とした。

 委員らは、死亡したイルカの治療薬投与の量や、インストラクターの経験値、死亡解剖などの解明状況などを問うた。

 今後、年内に2回ほどの会合を開き、イルカ死亡の原因究明と、イルカに良い環境の施設運営とするための検証を行う。