2020.6.16どうなる?島の経済「コロナ禍で行き詰まる前にあらゆる手を」

 あまごころ本舗株式会社は先月25日、大型土産販売店「あまごころ壱場」閉店の意向を示し、今月末には観光事業を含め完全に閉店となることが決まっている。銀行や財務担当らと協議を重ねた同社は、壱岐での観光事業と土産販売店の経営をこのまま継続した場合、11月までに億単位の赤字を抱えることがわかったという。閉店に至るまでにコロナ禍の影響を受けていることは言うまでも無い。この深刻な事態は、同社のみで起きていることではなく、市内の他事業者、特に観光に携わる事業者らは他人事ではないはずだ。

 

 市商工会は1日付けで、市内事業者を対象に2回目の新型コロナウイルス感染拡大に伴うアンケート調査を実施した。前回、3月17日のアンケート調査から約3か月ぶりに事業者の声を聞く機会となる。

 調査は、同月14日に本市で1例目となったコロナウイルス感染者が確認された直後に実施。アンケートは市内591事業者に配布した。回答した165件の事業者の中には、「5月連休に影響があれば廃業に」「先の展望が見えない」「貸付制度はあるが、コロナ終息が無ければ返済が心配」など危機感を募らせる意見もあった。また、同感染者が移住してきた直後の島外者であることについて怒りを表す意見も見られた。

 今回2回目のアンケートでは、▽2月から5月の売上げは、前年同月期間に比べてどうだったか▽6月以降の売上げは、どのようになると予想しているか▽国の持続か給付金は申請したか、など5項目の記入欄を設けている。回答の締め切りは9日まで。今後の調査結果に注視していきたい。

 

全国的に倒産件数増を予想 

 信用調査会社の帝国データバンクは先月15日、全国で今年の倒産件数(負債1千万円以上、法的整理)は2013年(平成25)以来の1万件を超える予想を明らかにした。休廃業や解散の件数も昨年の2万3634件を上回る2万5千件に達する見通しも示した。

 4月の倒産件数は758件に達し、うち123件が旅館・宿泊施設などの観光関連や飲食関連。原因は新型コロナウイルス感染拡大の影響で急激な稼働率低下によるもの。

 6月2日時点での新型コロナウイルス関連での倒産件数は、全国で205件。そのうち、法的整理は135件、事業停止は70件だった。業種別の上位は、ホテル・旅館39件、飲食店26件、アパレル・雑貨・靴小売店16件、食品製造15件、食品卸12件、建設8件などとなっている。

 

旅行自粛から一転、国県市は全面的に活性の方向へ

 観光庁は先月29日、宿泊旅行統計で4月の国内のホテルや旅館に宿泊した人数が、前年同月比76・8㌫減の延べ1079人と過去最少だったことを公表した。このうち日本人は71・1%減で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う旅行自粛の影響が大きかったようだ。また、入国制限により外国人旅行者は97・4㌫減であったこともわかった。

 宿泊施設を支援するため、市は先月から市民を対象に市内宿泊施設の宿泊費を半額補助、県では今月から、県民利用限定の県内宿泊で5千円を割り引くキャンペーンを始めている。国は観光需要喚起事業として、国内旅行の費用を半額補助などのキャンペーンを7月下旬から開始する準備を進め、コロナ禍中の旅行自粛から一転し、活性化に向けた動きに切り替えた。

 現在、北九州市を含む福岡県はコロナ第2波が発生していると言われ、日本全国の中でも感染リスクが高いエリアとして北部九州全域が見られると、旅行先に選ばれない見方もある。現在、本市で展開される支援策の宿泊キャンペーンは、市民の助け合い利用で増加傾向にあるが、市、県ともキャンペーン終了は7月末。その後は、国のキャンペーンが本格始動するが、北九州市で起きた第2波の影響が見えない現在、順調な地域経済の回復に向かうとは言いづらい。

 その場合、市や県は新たな支援や救済策を打ち続けねばならないかもしれない。市内の宿泊事業者は「3月から5月までほぼ無収入だった」と言う。今月からはキャンペーン利用による回復はあるが、問題は夏以降の旅行者の動向だ。また、県の試算でコロナによる県内観光の損失額は、1~4月までに約280億円とダメージは深刻だったことも分かった。まだ予断を許さない状況が続きそうだ。

 

行動自粛により個人消費も低迷

 九州経済調査協会は2日、本年度の九州沖縄の経済成長率が前年比5・7㌫減に落ち込む見通しを示している。新型コロナウイルスの影響で個人消費が減少したことなどが理由にあるようだ。

 市内でも、外出自粛の影響から3月末から5月上旬にかけて、外食や娯楽などの出費を控える動きがあった。また、景気に対する先行きの不安なども消費減少に影響している。

 市と市商工会は、他自治体よりも早い時期から消費拡大のためにプレミアム商品券を発行した。第1弾は先月7日の発売からわずか1週間ほどで完売。反響を受けて市は、7月上旬に発売を予定していた第2弾の販売を今月1日に前倒して早急に対応した。第2弾は飲食サービス利用に加えて、新たに市内全店で使える共通券を加えた2種類1セットで発売し、矢継ぎ早に施策を打っている。市商工会は、「第2弾の販売も好調。利用期限が年末までと長期間あるため、島内消費に大きく貢献する」と見ている。

 

この先どうなる?島の経済は?

 市内でも大手のあまごころ本舗株式会社の閉店は、少なからず本市の経済全体を表しているのではなかろうか。コロナ禍による経営状況への影響で店舗の継続か撤退かは経営者の判断によるが、同じ状況となる事業者が出て来ることは大いに考えられる。

 心配となるのは、仕事を失った従業員の今後の雇用のほか、影響を受ける他事業者や販売場所を失った個人生産者など。また、連鎖までにはならないだろうが、今回の事態を受け、事業者が廃業や撤退などを決断するきっかけになるかもしれない。

 本市の経済は観光が占める割合が多い。来島してもらわねばどうにもならない。農漁業など一次産業も、売り場や販売ルートが機能せねば収益は上げられない。飲食店は島内外の人の流れが活性されてこそ、来店やテイクアウトにつながる。

 今は北部九州として括られる北九州市のコロナ第2波の影響が拡大せず、無事に終息していくことを願うだけだ。