2021.3.30「スーパーシティ構想」凍結か
施政方針で掲げた積極的な方針から一転、慎重な検討へ方針転換
市議会3月会議最終日の17日、白川博一市長は市が積極的に取り組もうとしていた「スーパーシティ構想事業」を、事実上凍結することに決めた。白川市長は「議員から厳しい意見があった。熟慮した結果、今は新しい事業に取り組むのではなく、財政の立て直しに全力を注ぐべきと判断し、この取り組みへの挑戦は慎重に対応することにした」とし、施政方針で述べた積極的な考えから一転、消極的な考えへと方針を変えた。方向性を変えざるを得ないきっかけとなったのは、財源不足による補助金減額などで市民に強いる痛みや、市民生活とかけ離れた事業案に対する数人の議員からの反発だった。
市議会3月会議の初日に公表した施政方針で白川市長は、「市の将来像の加速実現を目指し、公募中の『スーパーシティ構想』に挑戦したいと考える。国による選定は全国5か所程度であり極めて狭き門だが、市民をはじめ全国及び世界の人々が住みたいと思う理想の島の実現を目指す」と挑戦する決意を示していた。
同構想は、AI(人工知能)やビッグデータを活用し、自動車の自動運転やキャッシュレス、遠隔教育など、生活全般をスマート化した『丸ごと未来都市』を構築するもの。少子高齢化や過疎、空き家問題といった地域が抱える諸課題を、最先端技術で解決しようという国の試みになる。
本市の未来に向けた事業には、SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業もある。「2030年の本市のあるべき姿の実現に向けて、経済・社会・環境の各分野において、様々な事業を展開している」として、現在、積極的に事業を進めている。
スーパーシティ構想案を受けた議会は、市と白川市長が押し進めようとしている施策に懐疑的な考えだった。市議会一般質問で小金丸益明議員は「市は現在、SDGs事業を推進しているが、さらに新たなスーパーシティ構想を行うという。これらは市民生活とはかけ離れた事業で、地元にお金が落ちるようなものではない。こういう事業に着手することはやめてもらいたい」と苦言を呈している。
音嶋正吾議員は、「市はSDGsを連呼しているが、それで市民は生活できるのか。最先端技術を導入するという同構想への取り組みも、高齢化が進む本市にあった施策なのか。もっと現実に即した施策でないと市民に伝わらない」と市長に意見し、両議員は同事業が民意と乖離していることを強調した。
議員らの意見を受け、白川市長は積極策から方針を一転し、「今は財政立て直しに全力を注ぐ。同構想の挑戦は慎重に対応する」と消極的な考えに改めた。