2025.4.16(水道料金)未納は約700件、計8700万円
上水道料金の長期未納による市民間の不平等、早期の改善を講じるべき社会問題
上水道料金の長期にわたる未納が、利用者の不平等につながる社会問題を生んでいる。上水道は市民生活のライフラインであり、水道提供の差し止めは生命に関わることから、料金未払い者がいても止められない。このことが、支払った人と未払いの人との不平等を生んでいる。市に確認したところ、上水道料金を滞納している世帯は約700件あり、中には長期滞納で数十万円を超える未納者もいるという。未納額の総額は約8700万円にのぼる。市の財政を鑑みて、早期の回収に踏み切らなければ、市民の不平等感は払拭できない。
上水道料金の未納がなく、きちんと支払っている市民は「市の水道事業は、まじめに支払っている市民のお金で成り立っている。長期にわたる未払いをしても、未納者は普通に使用している。この不平等を多くの市民は知らない。この理不尽な事実を知るべき」と憤る。
市上下水道課によると、本市の水道料金未納世帯は700件ほど。令和5年度末の未納額は8763万1914円。うち水道供給停止はわずか27件(先月6日時点)に過ぎない。令和6年度、同課は86件の未納者に納付の通知をし、23件の水道停止を行った。全未納世帯に対してわずかな件数のみの対応だ。一方で、令和元年度の未納額は約9800万円だったことから、未納分回収に向けた改善は進んではいる。
水道供給継続と停止の判断が不明瞭
同課は「未納者への対応に限度がある。すべてに対応するにはマンパワーが足りない」と言う。しかし本来、平等であるべき水道利用者に対し、納付者が滞納者分を支払っている矛盾は払拭できない。また、同じ水道料金滞納者に対し、水道供給継続と停止の違いにも矛盾が生じる。同課は「個別の諸事情を考慮し、停止か供給かを判断している」と話すが、判断基準は明確ではなかった。
上水道料金の債務は時効がある。民法の改正(2020年4月1日施行)により、時効期間が2年から5年となった。つまり、支払い日から起算して5年が経過すれば、消滅時効期間が成立する。ただし、水道事業者から支払いの催促に対し、「ちょっと待ってほしい」「次回、支払うので」などの発言で未払い者の権利が承認されれば、発言から5年後が時効となる。実質的に、上水道料未納の時効は簡単ではない。市担当課によれば直近5年間の時効が成立した額は計約230万円だったという。
料金未払いによるトラブルも発生
料金未納問題は、市民間の住居賃貸契約でも起きている。家賃未払いで長期にわたり水道料金も未納の借主が、支払い交渉に応じず退去しない、いわば不法占拠に近い状況の中、家主は市に対して上水道の停止を申し入れた。しかし、市は「水道はライフラインで、停止できない」と返答した。
水道はライフラインであり、むやみに停止すると市民の生命に関わるが、悪質な未納者に対しては、市が介入する何らかの対応が必要だ。上記の状況は、不法占有の違法に対し、家主の通報で状況を把握しているにも関わらず、市は改善できないことを示し、不法占拠者を支えているという理不尽さを生んだ。最悪の場合、家主と借主との訴訟問題にも発展しかねない。
壱岐の上水道事業は1967年から。市内には全長約600㌔の上水道管が張り巡らされている。料金未納に加え、当紙2月7日号では、水道事業が開始されてからすでに60年以上が経過し、耐用年数を超えた水道管の老朽化にも触れた。配管の老朽による漏水も大きな問題だ。同号の記事では「令和6年度の市内全域の上水道の有収率(給水量と収入があった水量の比率)は約70㌫。言うなれば約30㌫もの水道水が管から漏れ出し、地下に流れ込んでいることになる」と報じ、水道水に多くの無駄が生じていることもわかった。
水道事業は市民の納付により成り立つ。市民が不平等さを感じるような事業であってはならない。行政の対応にも限度があり、市民の協力で早急な改善が急がれる。