2025.2.24観光振興へ向けて施策を提言
観光マーケティング調査報告会を開催
本市の重要施策の一つでもある観光振興に役立てるため、委託提携を受けた通信会社エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ九州支社が実施した観光マーケティング調査報告会が13日、壱岐の島ホールで開かれた。宿泊施設や飲食店など観光業者ら58人が参加し、外から見た本市の魅力や旅行者の傾向、ターゲット層などについて理解を深めた。
調査は、同社のビックデータ(多種多様で膨大なデータ群)を活用した人流調査、インターネットアンケート、SNS調査の3つを行い▽本市を訪れた国内観光客の動向▽関東と関西、九州の都市圏在住者から見た本市のイメージや観光資源別の認知度と来訪意向▽観光客の生の声から観光地の拠点性や評価、満足やクレームの現状を分析。割り出した優先すべきターゲット層に向けて広告配信を行い、最終的に観光施策の方向性と方針の整理へ結び付けた。
観光客の実像と動向
2023年6月~昨年5月のコロナ禍明けに実施された国内観光客動態調査では、宿泊、日帰り客ともに冬季に落ち込み、宿泊客はもっとも多い夏季から約5割近く減少している。来訪者別に見ると、約6割が男性。特に30~50代の男性の日帰りの割合が高かった。女性は20代以降各年代で宿泊、日帰りなどほぼ同じだった。
来島する前後にどの都市に立ち寄ったか調べる他都市訪問状況では、福岡市が34・9㌫と一番多く、次いで対馬市、佐賀県唐津市が約15㌫。羽田空港のある東京都大田区など空港がある都市や福岡県糸島市、太宰府市など九州の人気スポットとの組み合わせも多かった。
また、本市のイメージ調査では、競合となる離島や半島などと比べて、「落ち着いた」「ゆっくりとした」「穏やかな」という回答が多くあった。
今後優先すべきターゲット層
本市へ旅行したいと答えた人は約8割と多く、目的としては、「食」と「自然」が約7割を占めた。30代以上の男性は「歴史」、30~50代の女性は「リラックス」を志向する傾向が高かった。
プロモーション候補として考えられる層は、旅行意向(旅行先に希望する度合い)が85㌫超でもっとも高く、顧客推奨度(他者に推奨する度合い)も高い40代女性、旅行意向が約8割で顧客推奨度も全体平均の上を行く40~60代男性を選定。旅行意向は8割あるが全体の約1割にとどまっている20~30代女性も顧客開拓の候補とした。観光客が旅行先を決める時に参考にしたものとしては、親族や知人からの口コミ18・8㌫、旅行会社12・8㌫が多く、20代以下だとSNS、60歳以上では旅行会社が多かった。
プロモーション対象となる観光資源
観光資源ごとの認知度については、「壱岐牛」が18・9㌫、来訪意向54・8㌫といずれも一番高い。
そのほか、「辰の島遊覧船」「猿岩」「湯本温泉」「マグロ」なども高数値だった。認知度が平均以下だが来訪意向が平均より上の「ひきとおし」や「辰の島海水浴場」は潜在力が高い資源であると言える。
スポットごとに口コミを投稿できる地図サービス「グーグルマップ」の調査では、「月読神社」と「住吉神社」は投稿が多く、評価も高い。温泉や地魚を提供する宿泊施設、飲食店、酒蔵やブルワリーも評価が高かったことから、高付加価値なサービスを求める観光客にとってはこうしたスポットが優先されると考えられる。
今後の観光施策に向けて
調査分析結果をふまえて、今月1日からNTTドコモが運営するメディアのdメニューで旅行に興味を持つ20~40代女性、40~60代男性へ広告配信を実施している。
島内事業者、市民、有識者の意見などを収集する必要があるが、現時点での同社の提言として、人材育成、情報発信、観光商品開発、基盤整備の基本施策案をあげた。
続いて、市から来年度~2029年度の第4次総合計画に掲げた観光振興目標について説明した。現状としては、コロナ禍前の令和元年には約39万人だった観光客数は6割弱まで落ち込んだが、昨年は35万人と9割弱まで回復している。また平成30年度のピーク時には外国人宿泊者数のべ3083人だったが、コロナで10分の1程度に減少し、昨年度1853人まで増えた。
総合計画では、来年度から毎年1万人ずつ増やし、5年後に40万人、観光消費額を今年度見込み額約66億円から毎年4千万円ずつ増やして、68億円を達成目標としている。そのために高付加価値な観光地域づくり、受け入れ環境の整備、セールスプロモーションの充実を主要施策として掲げ、観光事業者へ協力を呼びかけた。
最後の質疑応答では、データの詳細についての質問とともに、関係者間の話し合いの場を設けてほしい、市民の勉強会を開催したいなどの意見も上がった。
篠原一生市長は「観光業界はコロナ禍を経て変化している。これからのニーズと時代に合わせた観光戦略を進めるので協力してほしい」と話した。