2025.9.29県内でもっとも高い県外就職率
少子化進行の中、地域に若者をどうつなぎとめるか
本市の高校卒業者の県外就職率が依然として高止まりしている。昨年3月卒業者では、男子65・5㌫、女子22・2㌫、全体で55・3㌫が県外に流出し、県平均の31・5㌫を大きく上回った。背景には福岡市への近さと交通の利便性があるが、少子化が進む中で地域の担い手流出が課題となっている。
文部科学省が公表した令和7年度学校基本調査(速報値)によると、県全体の高校卒業者の県外就職率は28・2㌫だった。だが本市の県外就職率は55・3㌫(昨年3月のデータ)と突出して高く、県内の他市町と比較しても顕著である。例えば、対馬市は32・4㌫、五島市28・6㌫、松浦市28・6㌫にとどまっており、本市は突出して若者が島外へと流出している。
その理由として、本市から福岡市までの地理的近さやジェットフォイルなど交通手段の利便性があげられる。都市部への進学や就職が容易であることは若者にとって魅力である一方で、地域にとっては人材流出の要因となっている。
こうした状況は少子化の進行と相まって深刻さを増している。昭和23年度に21万人を超えていた県内小学生数は、令和5年度には6万6千人余まで減少。高校生も同様に減少傾向にあり、今後も卒業生自体が減り続ける見通しだ。限られた若者がさらに県外へと流出する構図は、地域社会の持続可能性を揺るがしかねない。
一方で、市内にも観光や1次産業、IT関連など新たな仕事の芽はある。若者が魅力を感じる職場環境やキャリア形成の機会を整備できるかが鍵だ。島外で経験を積んだ後に戻ってくるUターンや、移住者との協働を促す仕組みづくりも求められている。
本市に若者をつなぎとめることは容易ではない。しかし、地域に根ざす教育・産業・生活環境を強化する取り組みなくして、人口減少の歯止めは難しい。進学や就職の選択肢が広がる今こそ、地元で生きることの意義を子どもたちに示す努力が必要とされている。