2024.8.27松永安左エ門記念館、4年後の新館完成を目指す

郷土の偉人の功績を後世に伝えるため、建物の老朽化と時代のニーズに対応

 

 1971年の開館から50年が経過した石田町の松永安左エ門記念館の建て替え計画が進んでいる。軽鉄骨コンクリートの建物の老朽化など、このままでは観光客のニーズに対応できないことなどを理由に、市教育委員会(山口千樹教育長)と市文化財展示施設再編計画検討委員会(西高正会長、以下、再編委員会)は7日、一支国博物館の講座室で1回目の委員会を開いた。市教委は「新館建設のために来年3月末で休館するが、2028年6月16日には新たな施設での開館を目指す」と発表した。

 

 国内の電力事業の礎を築いたことから「電力の鬼」と呼ばれた、松永安左エ門(1875-1971)は、全国にその名を知られる、壱岐が生んだ不世出の偉人。その功績を後世に語り継ぐために1971年、松永翁の生家が残る石田町印通寺浦に記念館を開館した。これまでに島内外から多くの来館があり、市内小学校では社会科の学習で訪れ、松永翁の功績などの学びを深めてきた。

 現在、開館から50年が過ぎ建物の老朽化が進んでいることから、2019年に松永安左エ門記念館運営検討委員会から白川博一前市長に対し、同記念館のあり方に関する提言書を提出、「価値ある資料を効果的に展示し、来館者にふさわしい新たな記念館として生まれ変わること」などを求めた。

 市教委は昨年7月1日、新・同記念館(仮称)建設基本構想を策定、市民の意見や松永翁ゆかりの人たちの協力や助言を受けながら具体的な整備計画を検討する方針を決めた。

 基本構想には、現状では建物の老朽化や情報化社会のニーズに応え切れていないことはもとより、「壱岐が生んだ日本の宝(松永翁)を後世に語り継ぐことを柱とし、偉人にふさわしい新たな記念館の整備を求める。来年は松永翁生誕150年を迎えることから、注目度はさらに大きくなると思われる」など示した。

 具体的には①現在の記念館は手狭な印象を与えている②平成28年度の耐震診断で結果は良好だったが、法定耐用年数を超えている。外壁の亀裂、電気設備の劣化、バリアフリー化の必要性などがある③これまでの部分的な修理対応では、前途の課題を克服できない-などの課題を挙げた。

 建設に伴う基本計画では、新たな新館は現在の記念館と隣接する旧ふるさと資料館の敷地を合わせた約1638平方㍍を活用。生家や現在も展示している路面電車は修復の上でそのまま展示となる。今後、施設運営に民間からの公募による指定管理者を設けること、現在の入館料大人100円を400円にする案などの検討も進めていく。

 施設運営を維持していくための目標として、年間来館者数7千人、開館から5年以内の総来館者数3万5千人達成を掲げている。過去の実績で見れば、コロナ禍の令和元年度から昨年度までは年間2千人から3千人で推移した来館者数だったが、コロナ化以前は5千人前後の来館者が訪れていた。

 今後、再編委員会で基本計画をまとめ、来年3月31日で休館、休館時は石田農村環境改善センターを仮設展示場として資料などの公開を継続する。来年度に旧館の解体と更地化、令和8年度から建設に着手し、2028年6月16日の開館を目指す。